すべてはあの花のために⑥

 しかし、彼女はあんなこと言ってましたけれど、彼、今超が付くほど忙しかったです。何がって、3年生センター試験とかあるし。入試関係で先生方はバッタバタ。
 でも葵が「そのみっともないツラ貸してもらえます?」と冗談で言ったら「いつでもどーぞー」と返ってきたから、仕事を他人に押しつける気なのだと察した。「じゃあ、落ち着いた頃でいいですよ? お仕事頑張ってくださいね?」と嫌みったらしく言ってみたら、やっぱり嫌そうな顔していたので。

 絶対口実に仕事抜ける気満々じゃないかと。それでも葵は一向に構わなかったのだけれど、どうやら2月上旬だったら一旦落ち着くそう。一度そこで話をさせてもらうことになった。


「(キク先生と、……あとはあの人にも連絡入れておかないと)」


 葵は、ある人にも一通メールを入れておいて、連絡を待つことにした。その人もどうやら忙しいみたいだった。でも、バレンタインの前週末なら時間が取れるとのことだったので、そこでお願いをした。
 それからまたあっという間に時間が過ぎ、みんなとは相変わらず話さないまま、2月に入ってしまった。


 生徒会室。時刻は17時半をまわった頃、頭をポリポリ掻きながら、だらしなく扉からキクが入ってくる。


「悪い悪い。遅くなったわー」

「別にいいですけど、もうちょっとシャキッとできないんですか?」

「今それをしてきて疲れたの。お前さんには別にしなくてもいいだろ」


 いや、絶対にしてないでしょうよ。いつもスイッチOFFのくせに。いや、彼女の時だけONかもしれないけどさ。


「キク先生? 何か飲まれます?」

「おー。そんじゃあお前さんと一緒のコーヒーをブラックで頼もうか」


 そう言われると思っていたので、ささっと作って渡してあげた。


「お時間大丈夫です? お仕事は?」

「今日は送っていってやるから。いつまででもどーぞ」


 ずずずーっとさっそくコーヒーを飲んでいた。でも、時間に制限がないのは有難い。
 葵も一口コーヒーを飲んで、話を始めた。


「今日キサちゃんはいいんですか?」

「別に毎日一緒ってわけじゃないぞ」

「そうは見えなんですけど……」

「そこまでがっついてねえよ」


 キクはイメージ挽回を企んでいるようだが、もうきっといろいろやらかしてるから無理だと思う。


「ところで、オレを呼ぶなんて珍しいじゃないか。こんなに話すのいつ振りだ?」

「①巻ですね」

「おいおい。オレそんなに作者にほっとかれたんですか」

「いろんなところで暴れてはいましたけどね」

「………………」


 キクはコーヒーを飲んで逃げた▼


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