すべてはあの花のために⑥
わたしをわかって欲しいんだ
『――いいかいあっちゃん。こっからは一人だからね? 始業までにみんなを見つけるのがお勧めだよ! じゃないと今日一日捕まんないから。今日終わったら生徒会の集まりあるけど、みんながいたら難しいでしょう? 一対一の方が、きっと渡しやすいよ』
キサの助言の元、葵は隠れ場所を探しながら始業まではみんなが隠れていそうなところへと向かっていた。
『……キサちゃん。言っておきたいこともあるの』
『ん? 何?』
キサと別れる前、葵はキサが持っているカードを見つめながらそう言った。
『……どうか、わたしをわかって欲しいんだ』
『あっちゃん……』
『でも、知って欲しくもないんだ』
『……そっか。難しいんだね』
『うん。すごく矛盾してるんだ。でもそれは正反対じゃないんだってわかった』
『え?』
葵は立ち止まって、キサへとやさしい笑顔を向ける。
『難しいかもしれない。でも、わかると思う。だからわかって? わたしはキサちゃんを信じてるよ』
『……うん。ありがとう、あっちゃん』
『あと、約束して? わかっても言わないって。心に留めておいて』
『もちろんだよ! あたしは大切なこと、絶対に言わない!』
そんなこと、知っていたけどねと。
そんな風に葵は笑って、『それじゃあ、放課後にね!』と、キサと別れた。
『……あっちゃんが伝えられるギリギリなら、絶対にわかってあげる』
キサは、去って行く葵の後ろ姿を、苦しそうな顔で見つめていた。