すべてはあの花のために⑥
sideアキラ
皇のパーティー翌日。
時刻は19時。本日は道明寺でクリスマスパーティーの予定だったのだが。
「(パーティーと、聞いていたんだがな……)」
実際には葵と葵の父、それからアキラとアキラの父しかいなかった。
「(パーティーと言うよりも、なんだか家族ぐるみで夕食食べてる感じか)」
実質寛げるようなものではない。
何故だか常に、“誰かに見られている”ような気がしてならなかったからだ。
「(一回ここへ来た時はどうだった? 葵が修行に出てる時、シン兄に呼ばれた時……)」
それどころじゃなくて考えてなかったかもしれない。葵がいなくなったことに気が動転し、家政婦のあの態度。
「(……それに、シン兄はどこだ?)」
流石に、自分たちの時は給仕にも出られないかと思ったけど。
「(一応、今日行くからって連絡は入れたんだけど……)」
シントからの返信は、なかった。
「(いつも連絡したらうざいくらい話すのに……)」
今回はそれがなかったことに関して、何かあったのかと考えていた。
会話は殆どが、上流階級の話だった。企業、財閥、政界業界。少し変則だったことといえば、世界的規模事件や、芸能界で著名な役者の不倫や浮気話など。
「(父さんもよくやるな)」
それに葵もだ。興味があるのか、アザミが話す言葉ひとつひとつに相槌を打ったり、その話に質問とか、気になったことがあるのか自ら積極的に発言をしている。
そんなアキラも、全てを聞いていないわけではなく、何となく混ざった方が良さそうな雰囲気の時に少しだけ自分の意見を伝えた。
「(普通、家族ぐるみなら子供の話とか、趣味とか、最近はまってることとか話したりするんじゃないのか?)」
もちろんそれは、話の『場』によるが。
「(でも、さっきから葵が話題を先行して話してる気がする)」
まるで、アキラが考えているような話が、決して出てしまわないように。