すべてはあの花のために⑦

この一年、本当に幸せだったよ


「(……なんで。え……? どういうこと。天の声さん……)」

((…………))

「(なんで……? なにも、言ってくれないの……?)」

((……ごめん。葵……))

「(……もしかして……)」

((でも、どうか最後まで諦めないで))

「(あなたは……)」

((口に出して。言葉にして。あなたが、わたしが、してきたことを))

「(やっぱり……)」

((そして、今の気持ちを、絶対声に出して))

「(赤。ううん、もう一人のわたし……?)」

((……ラストスパート))

「(はい??)」

((最後まで見て。あなたがちゃんと、生きてきた証))

「(……わかった)」


 ぷかりぷかり。
 葵は、自分の生きてきた証を、最後まで覗いた。



 ――桜ヶ丘への編入。


『……ごめんなさいっ。理事長先生……』

『……道明寺さん……』


 編入の際、人質のことがあり、理事長は葵を篩にかけることなどできなかった。


『……君は悪くない。悪いのはすべて、道明寺薊じゃないか』

『いいえ。きっと。あの人をここまで壊したのもすべて。……わたしのせいなんですっ』


 こんなもの罪滅ぼしにもならないが、葵は理事長にすべて、自分のことを明かした。そして葵が卒業したら、何を援助してもらうのかも。


『(……なんという、ことだ……)』


 その話を聞いて、一番大事な子どもたちが犠牲となっていたことに気づいた。


『(……少し、様子を見よう)』


 自分が彼女を。それから、彼女が自分を。
 信用が築かれたその時――……動いてみよう。

 それから、彼女の動向を見守っていた。普段の彼女は、あの時はじめて理事長室へ入ってきた時とは、表情が全く違っていた。


『(……どこまで、彼女を縛り付ければ気が済むんだ)』


 見ていて限界だった。彼女のそんな姿を見て、何とかしてやりたいと思った。


『(……いい具合に、“彼”も動いてくれるといいんだけど)』


 それから、キクにも一緒に背負ってもらおう。あいつも、あんなんだけど立派な大人だ。


『(……ま、ちょっとメンタルきてるけどね、今は)』


 それから一年。葵の様子を見てきた理事長は、仲の良かったあの子たちも、高校に上がってきたのを境に、行動に出ることにした。


 最後のターゲットは…………


                  薔
                  薇
                  の
                  花。


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