すべてはあの花のために⑦

まさかのダブルパンチ


「ご協力感謝します」

「いえいえ~」

「疲れた~……」


 バッタバッタと飛ばされた人たちは敢えなくお縄についた。
 そして、葵のあまりの強さに、みんな本気で引いていた。


「(え。こっちで嫌われるのか、わたしは)」


 ま、そんなわけないだろうけど。


「ミズカさん何人? わたし49人!」

「……50」

「ええ!? なんで!?」

「だって、お前にビビってみんなオレの方に来てたし……」


 まさか、敵さんにまで嫌われてしまうとは。そしてミズカにも負けてしまうとは。


「それじゃああおいちゃん? いろいろ聞きたいことあるだろうけど、……一番ちゃんと答えてくれる人。わかるわね?」

「はい。彼に聞いてみます」

「一応あおいちゃんにも聞きたいことが……まあ知ってるんだけど、あなたの口から話してもらいたいから。嫌だろうけど明日、時間を作っておいて欲しいの」

「わかりました」


 葵が大きく頷くと、コズエは首謀者であるエリカ。その父である国務大臣。アザミの秘書。協力者である百合の理事長。そしてアザミを連れて車に乗り込む。


「……あ! 今日はみんなでご飯なんです!」

「え?」

「だから、コズエ先生も。お忙しいとは思いますが、今日は道明寺まで来てください」

「……ふふっ。わかったわ」

「レンくんが、おいし~いオムライスを作ってくれると思いますっ」


 葵がそう言うと、コズエとカオルと、何故かアイも固まった。


「あ、あなたもしかして。食べちゃったんですかあ……?」

「え? うん。美味しかったよ?」


 葵がそう言うと、三人が口元を押さえる。


「……あ、あおいさん。言いにくいんですけど、レンは究極な料理下手の味音痴で最悪なんです」

「おう……。まさかのダブルパンチだったとは」

「あ。あおいちゃん。勇気あるわねえ~……」

「いえいえ。……本当の勇気はありませんでしたよ」


 嫌われるのを覚悟で。危険なことを覚悟で。みんなにすべてを話すこと。葵はそれができなかったから、ここまでたくさんの人を巻き込んでしまったんだ。


「今日はみ~んなでご飯にしましょう! わたしを助けてくれたお礼です! 今晩は道明寺で祝賀会です~!」


 わあ~いと、両手を広げてくるくる嬉しそうに回っている葵を見て、葵を大好きなみんなが、本当に嬉しそうに笑ってくれていた。


「(……あ。いない……)」


 目の前で生足まで見せてやったというのに、逃げ出すとは卑怯な。
 ……ま、いるところに見当はついているけれど。


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