すべてはあの花のために⑦
そう思っていたら、みんなが何かを聞きたげな顔をしていた。
「ん? どうしたの?」
「今まで頑なに何も教えてくれなかったのに、どうして一気にハードルが低くなったのかなと」
「え? 質問って言っても葵のことは話さないよ? 俺のことだからね? 葵のことは、今まで同様ちゃんと踏み込んでいってね?」
「え。じゃ、じゃああの時も、あおいチャンのことじゃなかったらしんとサンは教えてくださってたんですか?」
「うーんどうだろう。あの時はあそこに雇われてる身だったし、葵も『変わってなかった』から……。言えることはすごく少なかったかもしれないけど、でも少しなら話してたかもしれないね」
アキラとツバサとアカネは、がっくりと肩を落としていた。
「しーくん? あーちゃんが『変わった』って……?」
オウリが首を傾げながらそう聞いてくる。
「いや、ていうか三人はいつシントさんと話してたのー?」
カナデも、どこか悔しそうな顔をしてそう聞いてくる。
「――圭撫くんが、葵から離れていた時だ」
「……!!!!」
カナデは、いきなり怒りを向けられてビクッと震え上がる。
「でも、君もちゃんと『願い』だったから。……ほんと、葵に近づけるようになってよかったね?」
すぐにコロッと態度を変えるシントに、カナデは「こういう感じかあ……」とアカネが言っていたことを思い出した。
「葵が『変わった』っていうのは、現に君たちが変わった証拠を持ってるよ? だって葵は、君たちには絶対に知って欲しくなんてなかったんだから」
「それは、あいつと友達だからっすか」
チカゼの言葉に、シントはどこか悲しそうに笑った。
「言いたくない。でもわかって欲しい。そんな葵の矛盾がいっぱい詰まってる。だからみんな、どうか頑張って」
つらそうに話しているシントに、みんなはお互いを見ながら顔を顰める。
「……信人さん」
「……何? 翼くん」
これが最後と言わんばかりに、ツバサは尋ねた。
「もう一度、ちゃんと教えてください」
「……うん。何を、かな?」
『教えてあげるから言ってごらん』と、そっと促す。
それでもツバサは言葉選びに気をつけて、シントにもう一度『あの時』のことを尋ねた。
「あいつのことを、……葵のことを、1から10までじゃなくて、0から10まで。何もかも、全部をわかってる人は誰ですか」
そう言葉にしたツバサに、その場にいたアキラとアカネは眉を顰めた。
「……翼。それは前、シン兄がちゃんと答えてくれたじゃないか」
「おれが、『あおいチャン自身のことを知ってる人は、誰がいますか』って聞いたら、しんとサンは――」
「そんなの、『葵自身だけ』に決まってるじゃないか」