すべてはあの花のために⑦
その日の放課後。
「は? おい、あいつは?」
「ああ、葵なら今日早退した」
「つきゆきクンも今日はあおいチャンに付き添うからって言って早退したでしょ?」
「れんれんは朝から見てなかったから、てっきりお休みなのかと思ってた!」
「先生のとこ、連絡行ってなかったのー?」
「……いや。先生、今日はレン休みだって言ってたから」
「まああっちゃんも休みのようなものだけど、菊ちゃんが早退にしてくれたんだよー」
「あいつ、結局一限受けずに帰ったからな」
生徒会室に集まった面々は葵とレンの話をしていた。
「それじゃああたし、クラスの回収行ってくるね~」
「あ! それだったら、おれも行くー」
「おれもおれもっ! あーちゃんのお仕事お手伝いっ!」
「だったら、一遍に済ませちゃお? あたしSクラス~」
「あ! 一番近い!」
「おれAクラス~。あかね、一番遠いBクラスまで、行ってらっしゃーい」
「むー!! 一番に帰ってくるからっ!!」
そう言って三人は可愛く回収に行ってくれた。
「……ねえ。なんであいつ、帰ったかわかる?」
「月雪が、葵を負ぶってクラスまで荷物を取りに来てくれたんだ」
「はあ?! 歩けないくらい重傷だったのかよ……!」
「ううん。アオイちゃんピンピンしてたよー」
「でもふらつきが酷かったらしくて、また倒れるかもしれないからって、月雪が負ぶってたんだよ」
「ふらつき……って。あいつ、顔色悪かったんじゃないの」
「いや。特にそうは思わなかったが」
「お前もよくわかるよな。流石にオレ、お披露目式ん時わかんなかったぞ」
「だから、ヒナくんにアオイちゃんのこと任せたんだよねー」
「……ま、問題はそのあとだけど」
みんなが一斉にヒナタを見る。
「なあヒナタ。あいつと、何があったんだよ」
「…………」
「日向? 葵との喧嘩は、素直になることが一番だ」
「お。アキ経験者だもんな! 流石だ!」
「いや、そこ別に尊敬するポイントじゃな」
その時、誰かが思いっきりロッカーを蹴り上げ、大きな音が生徒会室中に響き渡る。
犯人はヒナタだ。ただならぬ雰囲気を感じて、その場にいた全員、取り敢えず戦闘態勢を取る。
「……ふざけんな」
「ひ、ひなた……? 一体どうしたんだよ」
頑張ってチカゼが声を掛けるが、ギロリとヒナタに睨み付けられ、それ以上何も言えなくなる。
「……ちょっと今、話しかけないでくれる」
「は、はいっ!」
完全にプッツンいっているヒナタに、四人は震え上がったのだった。