すべてはあの花のために⑦
どうすればいいんだよおー
月曜日。葵は朝から学校に来ていた。普通に授業を受け、昼食も一緒に食べ、放課後はみんなで新歓のオリエンテーションについて会議。
「月雪、去年のドロケイはどうだった?」
アキラが、去年の参加者の立場から意見を聞いている。
「実際のところ、ドロケイをしたことがない生徒もいたので、十分楽しめたんじゃないかと思います」
「あんなに大人数でやるなんて滅多にないからねー。楽しかったよねー」
「ですから、今年もそれにするか、また真新しいものにしたらどうかと思うんです」
「真新しいって言ったって、もうすぐだろ? 新しいものを考えるのに時間かかんじゃね?」
「柊、今あるものを少し変えたりするだけでも、結構楽しいと思うんだ」
「れんれんは、何かいい案あったりするの~?」
「別にいい案って訳じゃないんだけど、昔の遊びとかどうですか?」
「たとえば……」と、レンがいろんな遊びをホワイトボードに書いていく。レンが書いていったのは、子供の頃に遊んでいたようなものばかり。
┌ ┐
鬼ごっこ かくれんぼ 缶けり
大根抜き だるまさんが転んだ
猛獣狩り ドッジボール 色鬼
└ ┘
「私がザッと挙げただけなので、これ以外にもあることはあるんですけど……」
何も言わないみんなに、レンは首を傾げる。
「……不味かったですか? だったら違うものに」
「つ、つきゆきクン! 違うんだよ!」
「……? 何か違いましたか?」
「俺らは、お前からそんな遊びが出てくることにすごい驚いてる」
「え。九条さん、どういうことですか」
「月雪くんは、そういう遊びを昔してたんだなーっと思って。ちょっと親近感?」
キサがそう言うと、レンの顔に少し影が差したような気がしたが、それに気付いたのは恐らく葵だけだ。
「そうですね昔は。……これ以外にも案があったら教えてください。きっとみんなも小さかった頃を思い出してはしゃいでくれるんじゃないかと思いますよ」
それからみんなで案を出して、オリエンテーションのゲームは決定した。
「うわ~! とっても楽しそうですね!」
結局のところ一つに絞れなかったので、三つにして各クラスに選んでもらうことにした。
「大根抜き、猛獣狩り、ドッジボールですか……」
「あんたはしたことあるの?」
「大きな体育館とかを貸し切れば、大根さんも痛くないですね。それに、元から引いてある線を使えば、ドッジボールもすぐできそう」
「あんたどっちも強そうだよね。絶対一緒のチームになろ」
「大根抜きは半分ずつ分かれて、抜いた大根さんが多い方が勝ちでいいですか?」
「うん。それでいいと思うよ」
「猛獣狩りは、何回かやって、文字数で全部余らなかった人に景品をあげる感じですかね」
「うん。でもズルする人もいるかもしれないからそこはちゃんと審判しておかなきゃダメだよ?」
「ドッジボールは簡単ですね。内野の人数が多い方が勝ち。それぞれの勝ち組さんには、景品を贈呈するんでしたね」
「あ! アキくん、景品って今年も理事長が準備してくれるの?」
スルーされるのは諦めたのか、ヒナタはアキラに話を振った。
「ああ。今年も奮発するって言ってた」
「それじゃあ、あたしたちは景品の心配はしなくていいんだね」
「とっても楽しそうですね。審判もですけど、みんなもたくさん楽しんでくださいね」