すべてはあの花のために⑦
――扉が閉まった瞬間、葵の体が大きく傾ぐ。
「っ、はあ。はあっ……」
葵のお腹に腕を回し、倒れるのをレンが防ぐ。
「はあ。……無理しすぎですよ。日曜日から一睡もしてないじゃないですか」
レンはまた、葵を負ぶって校内を歩く。
「心配。掛けた、……な。くて。みんなとたくさん。いた。……て」
「日本語下手くそですね」
「す。すみません……」
もう、立っているのも限界だった葵は、ぐったりレンに体重を預けた。
「……ありがとう。れん、くん」
「お礼を言われる筋合いは全然ないんですが。……ま、こちらこそありがとうと、言うべきでしょうか」
レンは、葵の見えないところでにやりと笑う。
「あなた、大嘘つきですね」
「………………」
「帰ってくる? 無理無理。連絡して? 絶対できませんよ」
「………………」
「ここまで来るのに苦労しました。……やっと私も解放されるんですね。よかったよかった」
そして、裏門で待っていた車の中に乗り込み、葵はもう一度校舎を見上げた。
「ごめんね。みんな。……もう『またね』は言えないんだ……っ」
小さくそう呟いた葵の目からは、たくさんの透明な涙が零れ落ちていました。
みんなときちんと、仮面無しで最後は話ができた葵は、療養という名の檻に閉じ込められる道を、選んだのです。