すべてはあの花のために❾
『……謝り。たかったんだ』
『わかってたのに。ちゃんと。……一人に。なりたいんだろうって』
『わかってたのに。みんなを止めなかった。オレだって。……来るべきじゃないって、わかってたのに。……結局バレるし』
『だから。……ごめん。ちゃんと、わかってるんだ。でも。それができなくて。止めらん。なくて……』
たとえ。熱に浮かされて言ったんだとしても嬉しくて。わたしを。理解してくれたんだと思って。見ていてくれたんだと思って。
……ルニちゃんだからとか。関係ない。
「すきなんだっ。はな」
『……難しいよね、幸せって』
バラードの歌詞を。嫌いじゃないと、そう言ってくれた。今思えば、あの『絵本』にはわたしのことが書かれていたから、そう言ってくれたのかもしれないけど。
でも。それでも嬉しかったんだ。
ああ。わたしのことを、理解してくれたって。わたしのその時の幸せの形を。否定されなくて。
「はながすきだからにっ。……きまってるじゃん」
『この間は、ごめん』
そう言われて。彼の腕の中に収まった時。胸の奥が、熱くなった。あの時は、初めてやさしく抱き締めてくれたからだと思った。その熱さが。……嫌じゃないんだけど、どこか居心地が悪くて。
彼の首元に顔を埋めてたら。勝手に手が、彼の服を掴んでた。『ん……?』と。『んん』と。会話になってないのに。何を考えてるのかわかるのが。そんな些細なことが、嬉しくて……。
「会えなかった間、オレがどれだけ捜したかわかる!? 何度も何度も呼んだっ。朝から晩までずっと。……っ、あそこで待ってた……!!」
『オレには近づかないでくれる』
本当の彼は、どっちなのだろう。あの時は、本当に胸が潰れるほどつらくて。しんどくて…………――ああ。そうか。
「ハナを見つけた時、オレがどれだけ嬉しかったかわかる!? わかんないでしょ!? ……毎日毎日。胸が押し潰されそうだった。気づいて欲しかった! でももう、あの頃のオレじゃなかったから言えなかった!! ……気づいて欲しかった。心の中で何度も呼んでたっ。ハナ。ハナ! って」
『あんたこれから奪還しに行くのに、そんな情けない顔でいいの』
……今まで。できないことなんてなかった。
「やっと。会えたのに。……消えんな。ばかっ」
『あんたが言えないなら、オレが言ってやる』
でも。……不安だったんだ。もし。失敗しちゃったら……って。
『あんたは大丈夫。ちゃんと、チカとキクとトーマと一緒にキサを連れて帰る。絶対に』
怖かったんだ。もう。……大事な人を。失ってしまうのが。……でもっ。
『……怖くなんかないから』
……そう言って。勇気をくれた、彼の真っ直ぐな瞳が。
『だから自信を持って』
そう言って。背中を押してくれた彼のやさしさが……。
『あんたなら絶対大丈夫』
……そう言って。わたしのことを支えてくれた彼が。
『だから、――行ってこい下僕』
「……っ。はな」
ルニでもない。怪盗でもない。本当の彼の唇に触れた頃。……遅すぎる、この気持ちの正体に気が付いた。
「……はな」
彼のことが。ひなたくんのことが。
……わたしは。好きなんだ。