すべてはあの花のために❾
よくわかんなかったけど、ご飯を食べたあとみんなを見送った。いろいろ聞いてこない当たり、流石だ。うん。
「……それで? アヤメさん話って」
「日向くん熱は? つらかったでしょ。よく頑張ったわね」
オレの手を取って、アヤメさんが歩き出す。
「え。お、オレ熱なんて」
「頑張って隠してたみたいだけど。お母さんは、子どもの異変にはすぐに気がつくものなのよ」
「……っ」
「取り敢えず寝ましょう。熱冷ましも、すぐに持って行くわ」
「……すみま、せ……」
「何言ってんの。子どもの仕事は、親に心配かけることよ」
「ははっ。……なんだ、それ」
「本当は、すぐにでもお布団に寝かせてあげようと思ったんだけど。みんなには隠してるみたいだったから、あんなこと言ってごめんなさいね」
そして案内されたのは、オレがさっきまでいたあおいの部屋。
「……あやめ。さん……」
「取り敢えず寝ていなさい。杜真の寝間着も持ってくるから、それに着替えてたくさん汗をかくこと。それが、日向くんの今日のお仕事よ」
「……あ、の……」
「あとで話を聞くわ。取り敢えずはここで寝てて? すぐに来るから」
そう言って、だだだーっとアヤメさんが廊下を走って行ってしまった。
「……はあ」
言うなって。言ったのに。……ばか。
結構限界だったので、布団にまた倒れ込んだ。
「……日向くん? 生きてる?」
「なんとか……」
なんか知らないけど、着替えも手伝われた。恥ずかしかったけど、抵抗したらめっちゃ睨まれてしまった。母恐し。
「はい。汗拭いて、熱測ってね」
「……はーい」
「はい。おでこ出して? 冷たいわよー」
「……ひや」
「寒くない? 大丈夫?」
「はい。……ほんと、すみません」
「いいのよ。ゆっくり休みなさい。お薬は、お昼におかゆ食べてから飲みましょうね」
「はい。……ありがとう。あやめさん」
「いいえ。……スマホ、ここに置いておくからね? 何かあったら呼びなさい」
「……はい」
「ごめんなさいね。ずっと付いててあげたいんだけど」
「ううん。大丈夫。……ごめんなさい。迷惑、掛けて」
「……。取り敢えず、お昼まで寝てなさい。また、様子を見に来るわ」
ぽんぽんと頭を撫でて、やさしい顔をして出ていったアヤメさんの背中を、ずっと見てた。
「……ありがと。あおい……」
そのあと、オレはお昼過ぎまで死んだように眠った。
――――――…………
――――……
「ん……」
「あ。……起こしちゃったかしら」
「……あやめ。さん……?」
「ごめんね、遅くなっちゃって。……お昼過ぎたんだけど、おかゆ食べられそう?」
「……あんまり」
「朝、葵ちゃんが作って行ってくれたんだけど」
「たべる」
「はは。そう。よかったわ。起きられる?」
「……がんばり、ます」
そう言って起きるけど、結局アヤメさんが手を貸してくれた。
……そうだよね、これが普通だよね。あおいは一体、どっからあんな力が出るんだろうね。
「おいしい……」
「そう。……ふふ。きっと喜ぶわ?」
卵粥。あったかくって。胸に沁みる。
……やっぱり、誰かが作ってくれたご飯は。美味しい。
「けほ。……ごちそう、さまでした」
「あら。全部食べたの? えらいえらい」
食べたぐらいで頭を撫でられる。子ども扱いなんて普段なんか嫌だけど、……今はちょっとあったかい。
「はいお薬。これ飲んでまた寝ましょう? 汗かいたでしょう。着替えてから横になってね」
「……あやめ、さん。あの……」
「ああ。……言わないでくださいねって、言われてたんだけどね?」
それは、二人でみんなの朝ご飯を準備している時の話――――。