すべてはあの花のために➓
コンコンと、ノックをしたけど、返事は帰って来なかった。でもガチャリと扉を開けて、オレは別室へと入っていった。
「……マサキさん」
そばにはシオンさんとサラさんについていてもらうことにした。モミジが今日は話すから、二人には今日は別室で見てもらっていたんだ。
「……おいヒナタ。どうしたんだ彼は」
「あ。今日もビビってるんですかカエデさん」
とは言うものの、カエデさんには、マサキさんが暴れでもして大会議室に来るのを止めてもらうように言っていた。……ま、それも大丈夫だったみたいだけど。
「……。あ。ひなたくんやん」
「……大丈夫ですか」
「……。大丈夫。や。……なんや。嬉しいような。悔しいような。……悲しいようなで。よう。……わからんねん」
「マサキさん……」
きっと、モミジだとわかったんだろう。
だから、会えたことが、……たとえ誰かの体だとしても嬉しいけど、あの時助けられなかったことが悔しくて……。そして。……目の当たりにしたんだ。死んだことを。それが、マサキさんにとってまだ少し、……理解するにはつらい現実なんだ。
「……。しおんさんも。おおきに……」
「マサキ。しっかりしな。たとえお前がアオイちゃんに蹴り入れたり、酷いことしたからって、あれは俺の指示なんだからね!」
「ああー……。そんなこともあったなあー……」
「シオンさんそれ、逆に傷口抉りましたよ」
「あ。やっぱりまずった?」
「シオン! あんたそういうところがなってないのよ!」
「あ~。サラが。サラがいる~……」
「すみませんサラさん。この馬鹿な人連れて出てもらってもいいですか」
「ごめんね。……マサキのこと、頼むわね」
シオンさんだって、奥さんと久し振りに会えたんだ。そうなる気持ちもわかる。だから、そっとしておいてあげた。
「マサキさん。あいつから、手紙を預かっています」
「……? 手紙……?」
「向こうは、マサキさんがあの時の彼だということは知りません。……それでももし、その彼を見つけた時は渡して欲しいんだと、そう言っていました」
「……。ほうか……」
「……あのねマサキさん。あいつ、自己紹介しなかったでしょ?」
「……? 名前。言うとらんかったなあ……」
「死んでからも、自分のことがこうしていろんな人に広がるのを嫌がったんです。オレとマサキさんは名前知っちゃいましたけど。……それでも、こうして『あなたにだけ』手紙を書いたんですよ、あいつは」
「……!」
「だから、読んであげてください。【名前も知らない彼に】と託されたものですから」
「……。おおきになあ……」
そう言って、マサキさんは手紙を読み出した。後はカエデさんに任せて、オレはきっともうみんなはそれぞれ話をしてるだろう大会議場へと帰った。