すべてはあの花のために➓

動力源


 あっという間に終業式を迎えた。
 あいつの体が冷たくなってしまう原因は、もう死んでしまっているアオイに、徐々に一日の時間を奪われ始めているかららしい。でも冷たくなりはしても完全に消えはしないから、そこは安心してくれと言われたので、オレは全然気にしてない。

 仕事自体は卒業式で終わりだけれど、来年度の生徒会への引き継ぎ資料を作っていたけど、メンバーは同じだ。中2の時だってそうだったし。


「(それに、家の思惑もある。もちろん、こちらの思惑もあるけどね)」


 なので今日は、一応一年間お疲れ様ということで、親睦会同様理事長とキクがいろいろ準備してくれていた。

 ……いろいろあったなあ。本当に、この一年。


「日向くん」

「はい?」


 今日このあと理事長とは話すことになっている。それは、願いを叶えてもらったツバサとともにだけど。


「冬青さんとは話ができたのかい」

「まだもうちょっと落ち着いてないんです。でも、4月に入るまでには」

「そうか。……彼は是非、こちら側についてくれると心強いんだけど」

「…………」

「日向くん?」

「……味方に。なってくれたらいいんですけど」


 だって父さんは。きっと、誰よりもハルナの事件を恨んでる。だから、もしかしたらあいつのことを……。


「大丈夫だよ」

「え……?」


 やさしい顔をして、理事長は諭すように呟いた。


「君のお父さんだ。信じてあげて」

「……はい。そうですね」


 信じよう。父さんを。話せばちゃんと、わかってくれるだろうから。
 そうしてふとみんなの方を見たら、何やらツバサとあいつが話をしていたんだけど……。


「(うわ。完全にオカマじゃなくなってるし)」


 攻めに攻めまくっている。あいつを見つめる熱っぽい瞳だけで、そんなことすぐにわかる。あいつもどうやら戸惑ってるようだけど……。何を話したのかな。
 ふら~っと理事長から離れて、みんなのところへ。というよりは、あいつのところへと行った。何やらお持ち帰り? の話をしてるみたいだけど。


「それじゃあ、オレがお持ち帰りする」

「ひっ。ヒナタくん!?」

「させねえから。それなら俺がする」


 いやツバサ、それはさせないわ。今お前お持ち帰りしようものなら、絶対オオカミになるでしょうよ。


「……ねえ。さっきツバサと何話してたの」

「っ。ち、ちかいっ……」

「教えなよ。下僕のくせに盾突くの? ご主人様に」

「は、はなし、……っ」


 逃げようとするこいつの腰をぐっと引き寄せて耳元でそっと話す。それでも逃げようとかするから、わざとこいつの横腹を撫でる。


「へえ。いい度胸だね。それじゃあここで公開悪戯を……」

「うぎゃー! 誰かー! 助けてー!」


 なんだか楽しくて調子に乗るよね。
 オレのこと知ってもこんな風に変わらずに接してくれて。それだけで、胸の奥が温かくなる。

 ……でもそれを、ふっと自分で蓋をする。だってもう……いや。何回も言わなくていいか。
 これでいいんだ。オレは。こいつが幸せそうに笑ってくれることが、嬉しいんだから。


「ひーくん覚悟ー!」

「ぐえー」


 まあみんな、願いを叶えてもらって、各々あいつに攻めてるみたいだけどね。みんなに取り押さえられたんだけど、……やっぱりオウリの当たりが強い。


< 92 / 307 >

この作品をシェア

pagetop