☯あおむしの旅☯

 しばらくして、おとこの人はゆっくりと立ち上がると、ぼくの方に歩いてきた。

そして、じぶんのリュックサックを見つめてつぶやいた。

 「帰ろう・・・」

 そうだよ、帰ろうよ。みんなが待っている・・・。

 おとこの人は、小さな声だけど、力強くいった。

 「帰ろう・・、帰ってもう一度・・・」

 よかったー。これでぼくも帰れる。

 「もう一度、そう、もう一度・・・」

 おとこの人は、こんどは大声でいった。

 「生きるぞー、生きるぞー!」

ほんとうによかった。帰ったら、ぼくもがんばってきれいなアゲハチョウになるよ。


 おとこの人は、ぼくをリュックサックのポケットに入れたまま、一歩一歩、山をおりはじめた。

 ぼくはほっとして、また、リュックサックのポケットの中で、ねむってしまった。

(おしまい)

< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

☲ミラーが笑った◎

総文字数/20,387

絵本・童話42ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
 ひろみが出会った二本足のカーブミラー。頭の上から降ってきた声に、ひろみはびっくり!!  ミラーはひろみに,自分はミラーボーという名前だと言う。 ほかにミラーと話せるのは優という女の子。 しかし、ひろみはその子に会ったことがない。
☬あおむしは見た・携帯電話 ❤

総文字数/3,885

青春・友情9ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ぼくは葉っぱの上からいつも見ている、君のことを。だから心配しないで。きっと大丈夫。
★☆限りなく遠い星☆★

総文字数/48,272

ファンタジー83ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
バイクにまたがり、林道を走る美術専門学校生の夕(ゆう)。気がついたら、230万光年離れたアンドロメダ星雲ステーションの内部に!!  はたして夕は地球に戻れるのでしょうか。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop