あの桜の木の下で
そして、入隊試験が始まった。

自分なりには結構頑張ったけれど、結果が出るのは明後日。その日にもう一度屯所に行かなくてはならない。そんなある日の事、


「いいから嬢ちゃん。俺らとイイ事しない??」

「イヤ、です……」

あの時の少女が変質者に絡まれていた。助けようとしたが、それは余計だったらしく、

「…ほらこっち来て。」

浪士がそう少女の手を無理やり掴んだその刹那、少女の持っていた荷物で思い切りその浪士を飛ばした。

「……貴様、何者だ!」

「はぁ……せっかく大人しくしてあげてたのに……貴方もですか。私そうやって女性と話す事しか興味無い輩が大嫌いなんですよね。私が好きな人は土方さんだけです。」

「ひじ、かた……」

そして、逃げ出した浪士達には目も暮れず、そのまま去ろうとした少女に、またもや他の男が近寄る。

「土方が好きって、どんな趣味してんだ。」

「……( *´˘`*ꐦ)」

そう少女に聞いた男も一瞬で蹴散らされていた。

そして、俺に気づいた少女は、

「……?あ!入隊試験に来てた方ですよねっ!こんなところで何してるんですか?」

俺に興味津々で近づいて来た。

「あ、いや、とくに。」

そんな曖昧な答えしか出ない俺に、その少女は

「……面白い人ですね。そんなに自分に自信が無い人初めて見ました!」

そう言って来た。確かにあながち間違えでは無い。だって彼女みたいに自分をしっかり理解しているわけではないし、新選組みたいに己の信念の為に動けるような性格じゃないから。俺は、その逆だ。俺みたいなのが新選組に入っても、戦力にすらならないかもしれない。

それと、今まであったこと全てを少女に言った。すると、

「……!そんなことないです!現に今自分を変えようとしてこの地にいるんでしょう?故郷を捨ててまで、こんな治安の悪い場所まで来たって事は、己の信念が、誠があるってことですよね!?理由はそれで十分なんじゃないんですか!?それに、その髪結紐……どこかで見たことあるような……」

どういうことだ?髪結紐をどこかで見たことある……?

「え……と……」

すると、遠くから声が聞こえて来た。

「おーい!土方さんが呼んでるぜ!」

「……!それじゃあまた、明後日に。」

そしてその明後日、

「合否を発表する。」

その言葉で、俺の運命は変わった。緊張しすぎて何も聞き取れなかったけど、あの少女が屯所にいたから、その子の顔で全て分かった。




俺の結果は、





合格だーーーー










そして、


「あの、これ。」

「……なにこれ……」

浅葱色のだんだら羽織。まるで忠臣蔵の衣装のような……


「これ、新選組の隊服です。どうぞ!」

こうして、俺は本当に新選組隊士となることが出来た。
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