結婚なんて、ゼッタイお断り!
こんな私なんかと、いったい誰が一緒にいてくれるっていうの?
誰がこんな無愛想な私を……好きになってくれるっていうの?
黒くてドロドロした負の感情が、心の中に溶け込んでくる。
「……っ」
気づけば家からずいぶん遠くまで歩いてきてしまっていた。
空の色はオレンジ色に変わっていて、もうすぐ夜がやってくる。
「帰らないと……」
外は危険がいっぱいだ。
大安寺という苗字を受け継いでいる私にとって、外の世界にはたくさんの敵がいる。
小学校四年生のとき、大安寺組の敵組織に誘拐されそうになった……あの記憶。
誰かに助けてもらって、なんとか私は無事だったらしい。
あのときのことは、恐怖のあまりほとんど記憶に残っていない。
何度か病院にも行ったけど、お医者さんからは『無理に思い出す必要はないからね』と言われている。