結婚なんて、ゼッタイお断り!
うつむきながら、家へ帰ろうとした私の元に、聞き慣れない声が届いた。
目の前にいたのは、腕を組みながらこちらを睨んでいる一人の男子。
年は私と同じか、少し上……くらい?
だけど、うんと高い身長と、ガッシリとした体格を見て、思わずうしろへ下がってしまう。
「だ、誰?」
一歩、また一歩と下がる私に、彼は同じように歩幅を合わせて近づいてくる。
「こ、来ないでよ!」
「稲瀬って言ったら、分かる?」
「……稲瀬?」
「俺の名前は稲瀬 玲央。まぁ、一言で言えばお前の家の、敵組織ってところだな」
「て、敵……?」
その瞬間、理解した。
稲瀬というこの男子は、私を狙っているんだって。
でも、今、私は一人。
守ってくれる人は、誰もいない。