結婚なんて、ゼッタイお断り!





丘の上の隠れスポットは、私と大和だけの秘密だ。

だから伊織には申し訳ないけど、少しだけ言葉を濁してしまった。





「おじいちゃんと、それからみんなも、ただいま!」

「おぉ、おかえり美桜。今日は陽太の看病、ご苦労じゃったの」

「うん!……で、陽太は?」

「僕ならもう平気だよー!今はお菓子をモリモリ食べてます!」



居間に向かうと、いつもどおりおじいちゃんや家族達がくつろいでいる。


「あ、それ!私のポテチなんだけど!」

「えー!だって僕、今日風邪引いてたんだよ?やっとご飯だって食べられるようになったんだから、ちょっとくらいいいでしょ?」

「何言ってんのよ!陽太のバカ!最低!」

「風邪引きの僕に向かって、なんてこと言うのさぁ!」

「風邪引いてたら何しても許されると思ったら大きな間違いなんだからね!?」





いつもどおりの騒がしさ。

いつもどおりの笑い声。




私は夕食の時間が一番好き。

だって家族みんなが集まれる唯一の時間だから。




どうしても夕食の時間に間に合わない家族もいるけど、大抵の人がここに毎晩集まってくれる。

畳の上に長いテーブルを何個も並べて、毎日おいしいご飯を食べる。

そんな時間が、一番幸せだって思う。






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