歪んだ月が愛しくて1
「おや、頼稀じゃないか。どうしたんだい、こんなところで?」
そこに現れたのはクラスメイトの頼稀だった。
頼稀の登場に俺が驚きを隠せないでいるにも拘らず当の本人は全く気にしていない様子でアゲハと何やら話し始めた。
「どうしたじゃないですよ。アゲハさんこそこんな目立つところで何やってるんですか?」
「勿論、愛の告白さ」
「アホですか。知ってましたけど」
何で頼稀がここに…。
偶然通り掛っただけならいい。
でももし話を聞かれてたら………不味いな。
「何で、頼稀がこれを…」
ギュッと、無意識に手の中のUSBを握り締めた。
「それはアゲハさんに頼まれてお前の写真を撮ったのが俺だからだよ」
「………は?」
頼稀が撮った?
俺の写真を?
……何故?
「そんなに驚くことはないさ。頼稀は僕の仲間だからね」
「な、かま…?」
……まさか。
「こう見えても“B2”の幹部」
「、」
その事実に驚きを隠せない。
頼稀は一見クールで淡白そうな性格であるが、無愛想と言うだけで粗暴な人種には見えなかった。
顔はイケメンの部類で体型は標準。特別鍛えてる感じではない。身形だって大して派手じゃないし装飾品の類も両耳のピアスだけ。
……見えない。
それはアゲハにも言えることだが。
「頼稀は諜報部隊の隊長でね。君のことは全て頼稀が僕に代わって見守って来たんだよ」
見守る=ストーカーってことだろうが。
何平然と言ってんだコイツ。
「し、てたんだ…」
「ああ、お前は有名人だからな」
皮肉だな。
こっちは好きで有名になったわけじゃないのに。
「いつ気付いたの?」
「初めから」
「初めって…」
「お前がここに来る前からってこと」
「………」
厳密に「いつから」知っていたのか聞きたかったわけじゃない。
俺が知りたいのは何で俺の正体を知っているのかと言うこと。それと何で俺が聖学に転入することを事前に知っていたのか、その二つだった。