歪んだ月が愛しくて1
「白き鬼神は誇り高く、圧倒的な力と鮮血に塗れたその美しさに僕は一瞬で心を奪われてしまった。あの日から僕は君の虜なのさ」
いや、さ……何でそうなる!?
アゲハはうっとりした表情を浮かべて悦に入る。
何を思い浮かべればそんな表情になるのか知らないが、途轍もなく気味が悪いのは言うまでもない。
「だからチームは関係ないよ。僕はあの日からずっと君を見守って来たんだ」
ストーカー?
……いや、まさかね。
「……因みにどうやって?」
本当は聞くのも恐ろしい。違う意味で。
でも知らないままと言うのも恐ろしいもので、結局は好奇心に勝てず聞いてしまった。
「それは色々だよ。僕の考えに共感してくれた仲間に君の行動を監視させたり、写真を撮らせたり…」
「完璧ストーカーじゃねぇか!」
「あははっ、そうとも言うね」
「そうとしか言わねぇよ!」
犯罪スレスレのアゲハの行動に背筋が凍る。
自分の知らないところでそんなことが起きていたとは夢にも思わなかった。いや、夢にも見たくないが。
「写真返せ!今直ぐ返せ!データも寄越せ!」
「それは無理と言うものだよ。写真は全て専門家に撮らせたからデータも彼が持っているだろうしね」
「絞める」
「そう怒らないでくれたまえ。僕は君のファンとして君の行動を見守ると言う義務が…」
「知るか!訴えんぞテメー!」
「それは困ったね」
その顔は全然困っているように見えない。
寧ろ清々しいほど開き直っているように見えた。
……腹立つな。
このやり場のない感情をどう発散させてやろうか。
そう思った矢先、あるものが目の前を遮った。
「―――ほら」
頭上から聞き覚えのある声が降って来たと同時に突如目の前にUSBが差し出された。
当然俺は躊躇なくそれに飛び付いたが…。
「………え、」
しかし次の瞬間、俺は安易に飛び付いたことを後悔することになる。
「データ。これに全部入ってる」
「な、何で…」
そこにいたのは見覚えのある人物だった。