歪んだ月が愛しくて1



「……悪い。余計なことを言ったな」

「別に。慣れてるって言ったじゃん」

「慣れるなよ…」



頼稀は小さな声で呟いた。
でも俺はそれに気付かないふりをして聞き返した。
何でもないと言う頼稀だが何か言いたげな表情で俺を見ていた。



「立夏、これだけは覚えておけ」



頼稀はソファーから立ち上がって俺と視線を合わせる。
頼稀の方が身長高くて若干見上げる形になったのは少し悔しい。



「何があっても俺はお前の味方だ」



真っ直ぐに射抜く瞳と、力強い言葉。
その言葉を全面的に信じることは出来ないが偽りだとも思えなかった。



「憧れからそう言ってるんじゃない。勿論全くないとも言い切れないが」

「……何で?」

「それは……、今は話せない」

「………」

「でも約束する。俺は何があってもお前の味方だ。そう易々と変態共にお前をやらねぇよ」



不意に頼稀の指が俺の前髪を梳く。
その優しい仕草に兄ちゃんの面影を見た。
幼い頃、泣き虫だった俺をいつもそうやって慰めてくれた。



「……気障か」

「アゲハさんと一緒にするな」



いつからだろう。

俺が兄ちゃんの前で泣かなくなったのは。

いや、泣けなくなったの間違いか。



……ダメだな。

また兄ちゃんのことを考えている。

もう忘れなきゃいけないのに。

何もかも忘れてしまいたいはずなのに。



「他に聞きたいことは?」

「あるような、ないような…」

「どっちだよ」

「だってまだここのことよく分かんねぇし」

「何かあったら俺のところに来いよ。隣の部屋だから」

「頼りにしてます」



そう言うと頼稀はスッと目を細めた。



「……怪しい」

「本当だって。ここの生徒で俺のこと知ってんのは頼稀とアゲハだけなんだから」

「それもそうだな」



何を疑ってたのか知らないが疑いが晴れてホッと胸を撫で下ろす。



「お前、いつも飯はどうしてんだ?」

「飯?食べたり食べなかったり…」

「………」



途端、頼稀は服の上から俺の腹を触った。



「な、何っ!?」

「……細い」



あ?

喧嘩売ってんのかコイツ?



「お前、晩飯はうちに来い」

「は?」



晩、飯…?



「今頃希が作ってる」

「え、自室で調理してんの?」



晩飯事情は各自で摂っていたから知らなかった。
言い方を変えれば晩飯の時だけは喧しいのから解放されていたから自分の時間を作ることが出来ていたので正直気楽だった。



でも…、



「アイツの特技だ。美味いぞ」



美味い、不味いの心配はしてない。

俺が心配してんのはそんなことじゃなくて…。



「……いいよ。俺が行ったら迷惑だし」

「俺が誘ったんだ。迷惑だったら端っから誘わねぇよ」

「でも希は…」

「それこそ無駄な気遣いだ。ほら行くぞ。今日はオムライスだ」

「………うん」















(希、今日から晩飯だけ3人分頼む)

(はぁ!?ちょっと勝手に…っ)

(オッケー!任された!)


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