歪んだ月が愛しくて1
哀Side
それは一本の電話から始まった。
Prrr…
「はい」
『俺だ。今会社か?』
電話の主は鏡ノ院文月。私が忠誠を尽くす唯一の主人。
私立聖楓学園の理事長であり、現在は新たな事業のために各地方を回っているはずの主人からの突然の着信に私は驚愕の色を隠しながら平然と対応する。
「いえ、学園におります」
長い間主人の秘書として仕えて来た。
今回私が学園内にいるのは留守の主人に代わってのこと。
本来なら主人の出張に付き従うのも仕事の一つだが、立夏様を手元に置いたからには立夏様の身の安全を第一に考え私を立夏様の護衛に当たらせたのだ。
主人から連絡が入るのはもう少し先だと思っていたため予想外の早さに内心動揺していた。
『そうか。アイツの様子はどうだ?』
「どうと仰いますと?」
『……その言い方は何かあったな』
「………」
『フッ、お前は本当に分かり易いな。秘書としてはどうかと思うが』
「申し訳ありません」
『それで、アイツに何があった?』
「………」
『哀』
「……貴方が一番危惧していたことが起きました」
『あ?』
私が主人からの着信に動揺した理由は他にもあった。
それは幼い頃から立夏様を溺愛していた主人にとって最も憎らしい事実を伝えなくてはならないからである。
「立夏様が、生徒会に入りました」