歪んだ月が愛しくて1
立夏Side
それはある日の昼休み。
いつものメンバーで食堂に集まっていた時のことだった。
「リカ、連絡先教えて!」
「……いいけど」
未空は勢い良く頭を下げて俺の前に手を差し出す。
傍から見たらプロポーズされてるみたいだからやめて欲しい。
それでなくても未空は覇王と呼ばれる生徒会のメンバーだから嫌でも注目を集めてしまう。
公衆の面前、しかも昼時の食堂なんかでそんなことされたらこっちがいい迷惑だ。
「え、いいの!?」
……驚き過ぎ。
自分から聞いたくせに。
「はい」
俺は黒色のスマートフォンを未空に手渡した。
スマートフォンを受け取った未空は何故か目を輝かせて。
「ほ、本当にいいの?後悔しない?」
「何するつもりだよ」
未空は嬉しそうな顔をするくせにどこか躊躇っているように見えた。
「後悔するようなことするつもりなら返して」
そう言って俺が手を出すと、未空は俺のスマートフォンを抱き締めながら左右に首を振って「しない…、絶対しないからっ」と言って満面の笑みで微笑んだ。
「ありがとうリカ!」
「……別に」
そんなことで一々喜ばないで欲しい。
それなのにもっと笑っていて欲しいと思う自分がいる。
……未空が、アイツに似てるから。
その笑顔を曇らせないで欲しい。
またあの日のように俺の名前を呼んで笑っていて欲しい。
小突きたくなるようなバカみたいな笑顔で。