歪んだ月が愛しくて1
「おい、飯来てるぞ」
「聞こえてないんじゃね?俺達のこと完全に忘れて自分達の世界に入っちゃってるし」
「まるでプロポーズだね」
……忘れてた。
俺は途端に恥ずかしくなって未空から視線を逸らし前を向いた。
「……ごめん。飯食おう」
顔の前で両手を合わせる。
その横で未空は飯そっちのけで俺のスマートフォンに頬擦りしていた。
「嬉しいっ!スゲー幸せ!俺もう思い残すことはないよ!」
気味が悪い。
「てか連絡先とか今更かよ」
「未空くんのことだからとっくに聞いてると思ったのに」
「俺だって前から聞いてたもん!でもリカってあんまりスマホを持ち歩かないから中々聞けるチャンスなくて、しかも事あるごとに頼稀が邪魔して来るし…」
「してねぇよ」
「してたよ!」
「……被害妄想?」
「現実だったよね!?」
確かに最初は教えたくなかった。
未空はこの通り煩いから電話やメールもしつこそうだし、俺自身も機械音痴だからスマートフォンの使い方は不慣れだったし、深く関わるつもりもなかったから必要ないと思っていた。
でも、気が変わった。
「良かったね未空くん。立夏くんに教えてもらえて」
「うん!俺幸せ!」
「……そこまで?」
「幸せだよ!だって俺スゲー嬉しいもん!」
スッと目を細めて未空を見る。
幸せと豪語する未空は本当に嬉しそうな顔をして笑っていた。
「……大袈裟」
そんな未空を見ていたら俺も釣られて笑った。
でも気付かれたらバカにされると思い口元を押さえて笑みを隠した。
「………」
「………」
「………」
「っ、………リ、リカ、それ…」
そんな俺に注がれる4人の視線が痛い。
「……何?」
何事かと思い素っ気無く返すと未空がポロッと言葉を漏らした。
「……かっわい」
「は?」
何が?
「リカの笑顔マジ可愛い…。リアル天使、マジヤバい」
「……うん。凄い可愛いね」
「眼鏡でこれだもんな…」
意味が分からない。
「これで理解したか?俺の忠告」
その言葉の意味を考える。
でも可愛いコールだけで何をどう理解しろと言うのだろうか。
「……知らね」
俺は4人の視線から目を背けて昼食を摂る。
今日の昼はミートソーススパゲッティーにした。口に含むとトマトの酸味と挽肉がマッチして美味しい。
「リーカ、拗ねないでよ。俺の焼肉丼あげるからさぁ」
「いらない」
「何で!?リカにあーんしたかったのに!」
だと思ったよ。