歪んだ月が愛しくて1



「……何企んでんだよ?」

「ははっ、そう見えるか?」

「見えるから聞いてんだよ。今日だけじゃない。この前から……いや、ヨージは最初から…」



……目敏いね。

そう言うところは兄弟揃って本当嫌になるわ。



「ヨージ」



その目で見られたら嫌でも自覚する。



「リカは玩具じゃないんだよ」



思い知らされる。

自分がどれほど汚れた人間か。



「リカは俺達の仲間だろう?」



お前ならそう言うと思ってたよ。

だってお前は綺麗過ぎるから。



つくづく思う。
俺は未空にはなれない。
出会ったばかりのりっちゃんに懐いているところも、無闇に生徒会に推薦したことも、簡単に“仲間”なんて言えちゃうところも俺には全くと言って理解出来ない。
過去に囚われたまま他人を信用するなんて自殺行為だ。
未空だけじゃない。あの尊も何だかんだ言いながらもりっちゃんを意識している。
他人に一切興味を示さなかった尊がりっちゃんにだけは違った。あんな態とらしく挑発してまで手元に置きたかったのかね…。
いくら外見は悪くなくてもあの眼鏡にあのネガティブ思考と何考えてるか分かんねぇところが俺には無理だ。他人の趣味思考にケチ付けるわけじゃねぇが理解に苦しい。
一番理解出来ねぇのは九澄だ。何でアイツまでりっちゃんに拘ってんのか分かんねぇ。



『友達になって下さい』



……面白くねぇんだよ。



りっちゃんが来てから、ずっと。



『深入りしろとは言いません。ただ立夏くんには何かを変える力がある。僕にはそう思えてならないんです』

 

何もかも。



「ヨージ、聞いてんの?」



遠くの方で何かが崩れる音がする。

大切にして来たものが、今まで築き上げて来たものが、全部台無しになってしまうような不吉な音がすぐそこまで聞こえていた。



「聞いてる聞いてる。りっちゃんは俺達の仲間って奴ね、はいはい」

「流すなよ。俺は真剣に…」

「じゃあ俺も真剣に答えてやっけど」



でも、そうはさせねぇよ。



「俺、りっちゃんを“仲間”だと思ったことは一度もねぇから」

「………」



ゴクンッと、息を飲む音が聞こえる。

多分未空以外のどっちかだろう。



「でも退屈凌ぎにはなるかなぁ」



面白くねぇなら面白くさせるまでだ。















「何で…」





微かに耳に届いた嘆き。



想定内の反応につい口元が緩む。





ほら、賽は投げられた。


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