歪んだ月が愛しくて1



◇◇◇◇◇





室内に差し込む月の光。
その光によって幻想的な柄模様が映し出された和室には2人の少年がひっそりと息を潜めていた。
1人は和室の中心で正座し、もう1人は引き戸を背に外の気配に意識を集中させながら和室の中心にいる彼の背中に視線を注いでいた。



「ヒタキ、この報告は確かなの?」



紅い唇から紡がれた甘い声は脳髄に直接届くような芯のある強いものだった。
その声色一つでヒタキと呼ばれる少年には彼の心境が手に取るように分かった。

彼は薔薇のような人だ。
とても美しい容姿は周りを引き寄せるのに近付く者をその棘で撃退してしまう。
昔から変わらない。唯一変わったことと言えば彼の我儘に拍車が掛かったことだけ。



「はい。白樺さんは総隊長の許可を得ずに独断で藤岡立夏と接触したようです」

「その現場を尊様に見られてしまったと?」

「そのようです」



誰もが振り向くような美しい造形が苦虫を噛み潰したような顔を見せた。



「……それで、白樺さんは今どちらに?」

「酷く怯えているようです。部屋に篭って出て来ないとか」

「あの白樺さんがどうしてそんな愚かなことを…」

「……如何しますか、(ゆえ)様?」



月と呼ばれる彼は意を決して言う。



「藤岡立夏はただの平凡ではなく平凡の皮を被った悪魔のようですね。白樺さんの心を傷付け、心優しい未空様を誑かし、そして尊様までも…っ。ああ、何て汚らわしいビッチなのでしょう!」

「では…」

「警告なんて生温いってこと。明日の新歓で藤岡立夏に制裁を与えます。早々に準備に取り掛かりなさいヒタキ」

「承知しました」



ヒタキは足早で和室を後にする。
その後ろ姿を確認した後、月は制服のポケットからスマートフォンを取り出して徐に耳に当てた。



「うふふ、これも全て尊様のため…」


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