歪んだ月が愛しくて1



「まあ、噂の真意なんてどうでもいいさ。どうせ王様に肖りたい愚民共の妄想が大半だろうし。ただあそこまで覇王を拒絶していたお前がどう言う経緯で生徒会に入ったのかは気になるけどな」

「別に…」



『精々足掻いてみせろ』



「……売られた喧嘩を、買っただけだよ」

「は?喧嘩売られた?何だそりゃ」



最初はケラケラと。
次第に我孫子は腹を抱えて笑い出した。



「……別に面白いこと言ったつもりはないんだけど」

「アッハハハッ!十分面白ぇよ!マジで傑作っ!」

「どこがだよ」



頭可笑しいんじゃねぇの。
実際あの場にいたわけでもないのに好き勝手に笑ってんじゃねぇよ。
こっちはな全然面白く…、



『男に二言はねぇんだよな?』



ああ、思い出しただけでも腹立たしい。



「まあ、これで正真正銘敵同士ってわけだ」

「敵?」

「どうせ俺達のことも王様から聞いてんだろう?」

「ああ、GDだっけ」

「ご名答。じゃあ俺がそこのリーダーってのも知ってるよな」

「は?」



リーダー?我孫子が?



「何でアンタが…」

「何となくだよ。他にやる奴がいなかったから仕方なく矢面に立ってやっただけ」

「嘘くさ」

「相変わらず口悪ぃな。顔は好みだけど」



(仕方なく、ね…)



我孫子の言葉を鵜呑みすることは出来ない。
飄々とした態度がこの男の真意を分からなくさせていた。



「……結局アンタは何がしたいわけ?何で生徒会を目の敵にする?」

「だから気に入らねぇんだって。前にも話しただろう」

「………」



我孫子の狙いが分からない。
生徒会を目の敵にするのには他に何か理由があるような気がしてならなかった。



「まあ、お前が生徒会に入った以上お前も俺達の標的だってこと忘れんなよ」

「……宣戦布告ってわけね」



覇王親衛隊に引き続き今日で何回目だよ。
今日はとことんついてない。厄日か?厄年だってまだ先だったはずなのに。



「好きなように取ってくれて構わねぇよ。ただ俺は忠告したからな?」



そう言うと我孫子は俺に背を向けて歩き出した。
やっと帰る気になったかと思いきや我孫子は去り際に「乳繰り合うのも程々にしろよ」と捨て台詞を吐いて今度こそ姿を消した。



「好き勝手言いやがって…」



標的か…。



どうでもいい。

いくら蝿が集ろうと俺の行手を阻むものは何でもあっても容赦しない。



例えそれが誰であっても。


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