歪んだ月が愛しくて1
立夏Side
「……ねむ」
そう言うと自然と欠伸が出た。
そんな俺の口元を葵の小さな手が覆う。
「立夏くん、お口」
「お下品だぞ」
「あ、ごめん」
新歓当日の朝。
一足先に食堂に来ていた希と葵は俺の姿を見るや手を振って「こっちだよ」と自分達の席に招いてくれた。
「立夏くん、昨日は大丈夫だった?」
「昨日?」
「ほら、白樺先輩に呼び出されたじゃん」
「あー…」
すっかり忘れてた。
「大丈夫だった?酷いこと言われなかった?」
「酷いこと…」
『未空様に無理言って生徒会に加えてもらったんだってね。本当図々しい』
『これは警告だよ。これ以上覇王様達に近付いたらどうなるか…』
「……忘れた」
もう慣れた。
罵倒も、中傷も、そんなこと一々気にしてたら身体がいくつあっても足りない。考えるだけ無駄だ。
「忘れたってことは何かあったってことだろう?」
「別に大したことじゃないよ」
「……そっか。でも何かあったらいつでも相談してね」
葵は形の良い眉を垂らして苦笑する。
そんな葵の肩に手を置いて希は何かを察したかのように「今なら無料だぜ」と笑ってみせた。
「……うん」
気を遣われているのか。
他人の感情に敏感なのも考えものだな。