歪んだ月が愛しくて1
「あれ、立夏くん寝不足?目の下に隈が出来てるよ」
葵に指摘されて目元に触れる。
「あー…昨日考え事してたら眠れなくて…」
「それって白樺先輩のこと?」
「まさか」
「もしかして今日の新歓が楽しみだったとか?」
「それこそないわ。俺インドア派よ」
それに加えて今回は特に気が乗らない。
昨日はつい勢いに任せてあんな大きなこと言ってしまったが、俺は元々大勢の前で何かやろうとかそう言う目立つことは好きじゃない。
友達付き合いも苦手だし団体行動なんて以ての外だ。
そのくせ頭に血が上り易くああも容易に会長の挑発に乗ってしまった自分が恨めしい。
でも売られた喧嘩は買うのが道理。やるからにはあの金髪バ会長をぎゃふんと言わせてやろうじゃねぇか。
「それにしても今日は立夏だけか?未空はどうしたんだよ?」
「、」
一瞬、その名前に言葉を詰まらせた。
「……何、俺だけじゃ不満?」
「いんや、眼鏡最高だけどさ」
誰が眼鏡だ。
俺の本体はそっちじゃねぇよ。
「今日は未空くんがお寝坊さんなの?」
「お、お寝坊さんって…っ、クッソ可愛いかよ!リアルエンジェルGJ!」
「えっ、え…?」
「……葵さん、それは可愛い過ぎるよ」
「もう立夏くんまで!僕は可愛くないよ!」
どっからどう見ても可愛いでしょう。
そう言おうとした時、食堂内がざわつき始めた。
その直後、俺の背中に衝撃が走った。
「リーカ♡」
「っ、」
聞き覚えのある声にビクッと肩を震わせる。
振り返らなくても分かる。
だってこの人物こそが俺の寝不足の原因なのだから。
「おはようリカ!」
「お、はよ…」
未空は満面の笑みを浮かべながら俺の隣に座った。
まるで昨日のことなんてなかったかのように接する未空の態度に俺は複雑な気分だった。