歪んだ月が愛しくて1
未空Side
残り20分を切った時、俺は一瞬の隙を突かれヨージにバッチを奪われてしまった。
ヨージは奪ったバッチを誇らしげに掲げて「な、寝技は強ぇだろう俺」と俺に見せ付けて来たが、俺はそれをガン無視して森の中を走り出した。
ヨージのことなんてどうでもいい。兎に角今はリカのことが心配で心配で、俺は大講堂に向かった足を速めた。
「お、未空じゃん」
大講堂には既にアゲハに捕まって戻って来ていた頼稀とオニ役として走り回って「疲れたー」と愚痴を零すのんちゃんとアオがいた。
リカは……、いないみたい。良かった。
「お帰り、未空くん」
「お疲れさん。後は立夏だけだってさ」
「た、だいま…。リカは今どこにいんの?」
「このカメラの位置だと裏庭の西側みたいだよ」
アオはステージの中央に張り出されたスクリーンを見て指差す。
そこに映し出されていたのはリカと尊が互いに牽制している場面だった。
あの2人、やっぱり会っちゃったか…。
てか発信機とかせこ過ぎ。正々堂々と勝負するとは思ってないけど尊にしては結構強引な手段に出たな。
それだけリカを庶務にしたかったってこと?まさか、あの尊が…?
「キャー!尊様格好良い!」
「いつ拝見してもお美しい!まるで美の女神アフロディーテのようです!」
「ああん、僕のことも捕まえてぇ♡」
……きっも。
相変わらず煩い外野共だな。
「俺達とは反対方向だったな」
「えっ、俺達がいたのって東側だったの?」
「今更かよ」
「じゃあどっちにしろリカと合流出来なかったってこと?」
「そう言うことだ」
「あれ?3人はずっと一緒にいたんじゃないの?」
「最初はそうだったんだけど途中で逸れちゃってさ…」
「何で?」
「予想以上に追手の数が多かったから先に立夏を逃したんだよ」
「あー…」
「ははっ、そうだろうね」
「え、そうだろうって?どう言うこと?」
「3人が出てった後、何人かのグループが束になって“藤岡立夏を捕まえるぞー”って張り切ってたんだよ。案の定大半の奴等が立夏狙いだったしな」
リカに狙いが集中したのは覇王親衛隊のせいだけじゃない。
何したかは知らないけど九ちゃんが周りを煽って尊に有利になるように仕向けたに違いない。九ちゃんならやりかねない。
「希くんのモノマネ似てないね」
「お黙りエンジェル」
頼稀も声は出さなかったにしろ「やっぱりか…」と言う顔をしてたから思わずお互い顔を見合わせて肩を落とした。