歪んだ月が愛しくて1



「立夏くんって本当人気あるよね。皆立夏くんを捕まえて何をお願いしたかったんだろう?」

「どうせ碌なことじゃないって」

「考えるだけ無駄だぞ」

「そうかな?僕だったら休日に一緒に出掛けたいな。立夏くんの私服姿も見てみたいし」

「ここにいる全員がお前みたいな考えの持ち主だったらどんなに平和か…」

「え?どう言うこと?」

「純真無垢ってことだ、この能天気天使」

「の、能天気…?」

「まあ、転入前から色んな噂で持ち切りだったもんな立夏は」

「ああ…」

「ふふっ、実物は凄く美人だったね!」

「本人にその自覚はないっぽいけどな」



俺はアオ達の話に耳を傾けて頷く。
3人が言うように転入前から学園中がリカの噂で持ち切りだったのは事実だ。
高等部からの異例の転入生としてまだ見ぬ“藤岡立夏”への期待と好奇心に誰もが注目していた。実際現在進行形で注目されてるけど。
何が要因かって一番はあの容姿だ。
弄っていない無造作な黒髪と黒縁眼鏡が一見がり勉風のオタクに見せてるけど、よく見て欲しい。
透き通るような白い肌に小さな顔。パッチリした大きな猫目の奥に映る灰色の瞳。
ほんのりと色付いたピンクの唇。ぷっくらしたちょっと厚みのある耳朶。しかも見た目に反して制服は第二ボタンまで開けてネクタイを緩めてだらしなく着崩している。その隙間から覗く鎖骨とかマジでエロい。それに笑った顔が何よりも可愛くて可愛くて……ああぁああああ!もうやばいっ!マジで可愛くてどうしよう!!想像しただけで萌え死にそうなんだけどぉおおおお!!



でも本当はそれだけじゃない。

一緒にいるようになってリカが注目される本当の理由が分かった。



見た目だけじゃない。
リカが纏う凛とした透明なオーラとか、儚そうに見えて強烈な存在感とか、そんな容姿以外の部分に惹かれて止まなかった。



「そう言えば未空くんが喧嘩してるところ初めて見たね」

「確かに」

「当たり前じゃん、実際喧嘩したの初めてなんだし。俺は平和主義者なの」

「初めての割には結構やるな」



褒められても嬉しくないんだけど。



「頼稀は初めてじゃないのかよ?」

「当然」

「やんちゃだね」



人は見掛けに寄らないって本当だったんだ。
一見クールで何事にも興味なさそうな頼稀が何で暴走族なんかに入っているのか不思議で仕方なかった。



そして何でリカに執着しているのかも。



「あのさ、頼稀は何で…」



そう言い掛けて言葉に詰まった。
その先を聞いてもいいんだろうか。
「頼稀は何で暴走族に入ったの?」「頼稀は何でリカを守る義務があるの?」なんて俺にそれを聞く権利が本当にあるのだろうか。



「俺が、何だよ?」



……いや、ない。



リカを守れなかった俺にはそんな資格ない。

例えそれがただのゲームだとしても俺はリカを守らなかったんだから…。


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