歪んだ月が愛しくて1
祠に手を伸ばして封筒を掴んだ直後、突然頼稀に腕を掴まれた。
「立夏」
「……分かってる」
囲まれたな。
それも結構な数だ。
尾けられていたことには気付いていた。
しかし一定の距離を取り着いて来るだけで何か仕掛けて来る気配はなかったから今まで放置していたが、ここに来て足音が迫って来たと言うことは端っからこれを狙っていたってことか。
「頼ちゃんは人気者ね」
「お前がな」
ガサガサと音がする。
すると茂みの向こうから黒い影が現れた。
ぞろぞろと姿を現したのは数人の男達だった。
脱色の繰り返しで傷んだであろう淀んだ金髪の男がざらついた笑顔を向ける。
「待ってたぜぇ、迷子の子猫ちゃん」
「オェ…」
誰が子猫ちゃんだ、気持ち悪い。
気障な台詞を吐くのはアゲハだけで勘弁してくれ。
「ドンマイ」
ポンっと、頼稀が俺の肩に手を置いて同情する。
同情するくらいなら紙袋を用意してくれ、マジ吐きそうだから。
男達はざっと数えて15人くらいか。このくらいなら余裕だな。
「お前が藤岡立夏だな」
金髪野郎が言う。
立ち位置、言動、風格、恐らく男達の中でリーダー的存在なのはこの金髪だろう。
「……そっちは?」
聖学の生徒には見えない。
それはチャラチャラした私服のせいだけじゃない。
独特の雰囲気。
嫌悪を生む臭いがする。
「んだよ、ハズレじゃねぇか…」
「うわっ、最悪…。顔の良し悪しは保証しないってそう言うことかよ」
「俺コイツで勃つ自信ねぇわ」
「風魔の方がまだマシだな」
値踏みするような目が俺と頼稀を交互に見る。
嫌な臭いが一層強まる。
「恐らくコイツ等は覇王親衛隊の手下だ。親衛隊の誰かに金や自分の身体を代償に雇われたんだろう」
「前に言ってたあれ?」
「ああ。所詮コイツ等は自分の欲を満たすためなら何でもやるゴロツキ共だ。お前が相手にするまでもない」
「でもあっちは俺ご指名みたいだけど?」
「無視しろ」
「そんな無茶な…」
「お前が無闇に手出したら相手の思う壺だぞ。どうせ親衛隊の仕業だろうからな。何かしらの目的のためにコイツ等を手引きしたんだろう」
「ふーん…」
何かしらの目的、ね…。
つまり火種は消えてなかったわけか。
まあ、あれだけ無差別に乱射されたら飛び火しても仕方ない。
さてと、どうしてやろうかな。