歪んだ月が愛しくて1
「―――あれ?」
「ああ、あそこが今回の折り返し地点だ」
スタートしてから約30分。運が良いのか悪いのか、俺達は脅かし役の上級生に遭遇することなくすんなりと目的地に辿り着いた。
そこには何やら不気味な雰囲気を醸し出す古びた祠があった。
「雰囲気出てんな…」
「ま、本物の墓だからな」
「墓?」
「何でもここの創設者が大層可愛がっていた愛犬の墓らしい。学園の番犬だったらしいからここに墓を建てたんだと。でもその事実を知ってんのはごく一部だけだから大抵の連中はビビってこの場所には滅多に近付かないってわけだ」
「成程」
犬の墓か。
確かにそれ聞いちゃうと拍子抜けだな。
「あれを取ればいいの?」
そう言って祠の上に置いてある数枚の茶封筒を指差した。
「ああ。でも上から順番に取る必要はねぇぞ」
「中に何が入ってんの?」
「景品」
「景品っ!?」
目を輝かせながら頼稀の言葉をリピートする。
そんな俺に気付いた頼稀が若干引き気味に距離を取った。
「期待すんなよ。どうせ大したもんは入ってねぇから」
「なーな、頼稀はどれがいいと思う?あれの中身って物じゃないよな?封筒に厚みはないから何かの券とか?」
「人の話を聞け」
「あでっ」
頼稀は落ち着けと言わんばかりに俺の額を指で弾く。
そう言いつつも何だかんだ言って「お前が決めろよ」と言ってくれるから優しいんだよな。