歪んだ月が愛しくて1
頼稀の態度で全てを理解した。
その殺気に当てられて腹の底が沸騰するように熱くなる。
「テメー等っ、まさか希に手出したんじゃねぇだろうな!?」
「くくっ、それは行ってからのお楽しみだな」
「早く助けに行かなくていいんでちゅか〜?」
「とっとと行かねぇと手遅れになるぜ」
「テメー等…っ」
頼稀の地を這うような低い声が肌に突き刺さる。
今までのものとは比にならないほど頼稀は男達をギリギリと睨み付ける。
「ヒィッ!」とそんな情けない声が金髪の後ろから聞こえて来たが、頼稀はそれすらも忌々しいと言わんばかりに更に唇の端を噛み締め拳を堅く握り締めた。
俺は今にも男達に飛び掛かりそうな頼稀を落ち着かせるために肩を掴んで制止する。
「電話は?」
「ダメだ。ここは圏外なんだよ…クソっ!!」
「落ち着けって。ちょっとは冷静に…」
「俺は冷静だっ!!」
必死で理性を保とうとしているのが分かる。
そんな頼稀に「落ち着け」なんて言いたくはなかったが俺自身の感情を制御するためにも言わずにはいられなかった。
ギュッと、頼稀の肩を掴む手に力を入れて金髪を睨み付けると、男は一瞬たじろいで息苦しそうに口角を上げた。
「お、もしれぇ…っ」
何が面白いものか。
人を玩具のように扱うゲス野郎共に無意識に拳を握る。
頼稀がここまで感情を表に出していなかったら俺が爆発しているところだ。
「っ、強気な奴は嫌いじゃねぇよ。その野暮ったい顔をぐちゃぐちゃに歪めて“助けてくれ”って命乞いするお前を想像すると……堪らねぇなぁ!!」
寝起きの獣が息を潜める。
今か今かとその機会を狙っていた。
「……ご託はいい。希に手出したら殺すぞ」
「っ、そ、んなこと、言っていいのかなぁ?お前等の大切なお友達の運命は俺達の手に掛かってんだぜ!」
ギリッと、頼稀が奥歯を噛み締める。
こんなこと言ったら怒られるかもしれないが間違いなく頼稀の弱点は希だ。未空や葵とは違う。
ただの幼馴染みでは説明が付かない。
頼稀にとって希の存在がどれほど大きなものか思い知らされた。
「言葉には気を付けろよ。友達の人生をお先真っ暗にしたくなかったらなぁ」
「クソ野郎がっ!!」
ああ、この光景。
あの時の俺も今の頼稀みたいだったのかな。