歪んだ月が愛しくて1



無駄口を叩きながらも未空と希は懸命に侵入口を探している。
それにも関わらず御幸陽嗣は澄ました顔でそんな未空と希の姿を後ろから眺めていた。

恐らく御幸陽嗣は気付いている。
少なくとも侵入口の検討はついているはずだ。
でも何も言わない。必死で探す未空達に助言すらしない。



(魂胆見え見えなんだよ…)



「ああ、もうっ!全然見つかんねぇよ!秘密の入り口なんて本当にあるのかよ!」

「よく考えたらここの警備体制からして外から侵入するのって結構難しくない?」

「じゃあ正面からってこと?」

「おじゃましまーす的な?」

「……あるかも」



ねぇよ。どこの世界にそんなバカがいるかよ。
万が一正面から堂々と入って来たとしてもお邪魔しますは有り得ねぇだろうが。



「はぁ…」



……仕方ない。



「未空、そこじゃない」

「え?」

「こっちだ」



俺は先頭を歩いて目的の場所まで案内する。
未空と御幸陽嗣の間に生じる温度差は歴然としていた。
だからこそバカみたいに直向きな未空の姿に心が揺れたのかもしれない。
反対に御幸陽嗣は俺の嫌いな奴ワースト3に入ったけどな。



「頼稀、本当にこっちで合ってるの?」

「多分な」

「多分?」

「俺が抜け道として使ってるところに行く」

「え、それ今言っちゃう?俺達の前で?」

「どうせお前んとこの会長は気付いてる。今更隠す必要もねぇからな」

「あらまあ、風魔くんは悪い子でちゅねぇ」

「「「キモ」」」

「おいおい、見事にハモってんじゃねぇよ」

「だって本当の………あっ」

「あ?」

「頼稀、もしかしてここ?」

「そうだ」

「わお、柵が1本抜けてんじゃん。どこの業者だよ、こんな手抜き工事したのは?」

「ねぇ、あれ見て」



そう言って希が指差した先を未空が懐中電灯で照らした。



「単車か」

「全部で10台はあるね」

「15人くらいいたんならニケツして来たんだろう。大勢で行動するのは目立つからな」

「これが奴等のってこと?」

「間違いない。俺達のは違うところに置いてあるしな」

「はい?」

「……冗談だ」

「お猿、ナンバーメモっとけよ」

「言われなくても…って、俺は猿じゃねぇ!」



やはり覇王は動くか。

余計なことしなければいいが…。


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