歪んだ月が愛しくて1
シキは再びパソコンの画面に視線を戻す。
画面に映し出されたある人物の名前と数字と記号の羅列にそっと指を這わせる。
それはいくつものトラップで厳重にロックされたある人物の個人情報だった。
学園内で保管されている学生の個人名簿では足が付くと思いいくつものサーバーを経由してやっとここまで辿り着いたと言うのに未だロックを解除することが出来なかった。
「……成程」
シキはパソコンを前にして考える。
このトラップと厳重なロックには統一性がない。
つまり複数の人間が彼の情報を守っていると言うことになる。
「1人や2人じゃないってことか…」
過去にこれと同じ羅列を見たことがあった。
数ヶ月前のあの事件に関与した人物もまたこれと似たような厳重なセキュリティーで個人情報を守られていた。お陰で未だに彼の正体には辿り着けていない。
それが再びこんなところでお目に掛かれるとは…、シキは嬉しい誤算に頬が緩むのが抑えられなかった。
下っ端達の後始末に出向いた時、あの日に酷似した悍しい光景を目撃した。
夜叉の荒らす地獄絵図。
誰もが殴られて顔の原型を留めていなかった。
これで仲間と言われても誰が誰だか分からない。
酷い者は手足がぶらんと可笑しな方向に曲がり、地面は血の海と化し、草木は真っ赤に染まっていた。
正に地獄。
こんな芸当が出来る者は彼しかいない。
「フッ」
これは偶然か、必然か。
画面に映し出された「藤岡立夏」の文字に口元が緩む。
「もしそうだとしたら…」
想像しただけで笑みが込み上げる。
自分の考えが正しければあの脳筋が食い付くのは間違いない。
それに幼馴染みの彼もまた「藤岡立夏」の亡霊に囚われた1人だった。
同姓同名?
若しくは―――…。
確証はない。
これは今ある結果から導き出した僕の勘。
だから、
「見極めさせてもらおうか」
君の正体を。