歪んだ月が愛しくて1



「……恐極の件も聞いた」



痺れを切らした頼稀が溜息を吐いて漸く話を変えてくれた。



「奴を退学にしたのは賢明な判断だった」

「賢明?」

「覇王はこれまでに何人もの生徒を退学に追いやったがその殆どが私的な理由だ。でも今回はお前の……いや、正当な理由があっての判断だと思っただけだ」

「……本当に?」



そう思うの?



「疑う余地はねぇだろう。新歓の一件に恐極が関与しているのは間違いないんだ。尚且つさっきのスキンヘッド野郎が恐極を捜してここに乗り込んで来たのが何よりの証拠じゃねぇか」

「それはそうだけど…」



本当に正当な理由なんだろうか。
確かに恐極が無関係な希を利用したり会長に怪我を負わせたのは事実だ。
でも俺には「お前のせい」だと言われているようでならなかった。



「アイツが恐極組の次期若頭ってのは聞いたか?」

「うん。白桜会の二次団体って言ってた」

「そうだ。ただ恐極組からの報復は心配しなくてもいい。今の恐極組は内部分裂で内輪揉めしてるからな」

「内輪揉め…」



どんなに正当な理由を述べられても月の退学のことは手放しに喜べなかった。
だからこの気持ちは多分一生付いて回ると思う。
でももうぐだぐだ言わない。ウジウジ悩んだところで過去を変えることは絶対に出来ない。悲しい決断をさせてしまった九澄先輩にも申し訳ない。



だから俺はもう―――、



(迷わない。……いや、迷いたくない)


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