歪んだ月が愛しくて1
「“鬼”…」
『“鬼”が君を捜しているよ』
……ああ、そう言うことか。
まさかこんなに早く仕掛けて来るとは思わなかった。
「俺は今回の一件に“鬼”が裏で糸を引いてたと考えている」
「……理由は?」
「奴等が乗り捨てた単車を発見した時俺も傍にいたんだ。未空はナンバーを控えただけだったが、俺は未空達に気付かれないようにその単車に発信機と盗聴器を取り付けた」
「そこまでしたの?」
「当然だ。ナンバーを照会するより確実な方法だからな。現に単車は法人名義で個人の特定は出来なかっただろう?」
「確かに」
「こっちで調べたところ奴等の正体が“鬼”の下っ端であることが分かった」
ゴクリと、息を飲む音がした。
それが自分から発せられたものだと気付いたのはもう少し後のことだった。
(アイツ等が…)
だから見覚えがあったのか。
もしかしたら奴等はあの時の残党かも………いや、待てよ。
つまり、さっきのスキンヘッドは―――、
「お前の考えてる通りだ」
「、」
たった一言。
でもそれだけで十分だった。
ギュッと、拳に力が入る。
途端、男に舐められた部分がゾワゾワした。
―――キモチワルイ
無意識に首元を強く擦る。
キモチワルイ、キモチワルイ、キモチワルイキモチワルイ…、
不意に頼稀の手が伸びて来る。
「……赤くなる」
「っ、」
頼稀に手首を掴まれた俺は自傷行為に近いそれを封じられた。
奴等に対する嫌悪感から思わず頼稀を睨み付けてしまったが、そんな俺を見て頼稀はどこか安堵した表情を見せた。
「その反応からして会いたいってわけじゃねぇんだろう?」
「……反吐が出る」
喉元を舐められた感触が未だ消えない。
本当、気持ち悪い…。
「安心した」
「あ?」
「会わせろって言われたらどうしようかと思ってたからな」
「……どうせそんな気なんてなかったくせに」
「だから安心したんだよ」
会いたいはずがない。
アイツを傷付けて虫けらのように扱ったクズ共なんかに。
会ってしまったら最期、自分を抑える自信がない。
「これで分かっただろう。恐極の時も今回も“鬼”が関与しているのは間違いない。恐らく侵入者を逃したのも“鬼”だろうな」
二度と会うことはないと思っていた。
それなのにこんな形で再開するなんてとんだ誤算だ。
「それに“鬼”が黒幕だとしたら全ての説明が付く」
「……どう言うこと?」
頼稀は何か知っている。
それが何かは分からないが嫌な予感がした。
「お前にはいくつか話してないことがある」
俺の予感はよく当たる。
「話して、ないことって…」
「“鬼”は近くにいる」
勿論、悪いこと限定だが。
だって俺は死神だから―――。
「奴等は聖学の…、高等部の学生だ」
ほらね、やっぱり。