歪んだ月が愛しくて1



「奴等は聖学の…、高等部の学生だ」



ギュッと拳に力が入る。
その事実を無表情のまま受け止める。



予想していなかったわけじゃない。

アゲハに言われた時からずっと考えていた。



「奴等の根城は風紀だ」



ただ何のアクションも起こさなかったのは俺があの頃から何も変わらず弱いままだから…。



「……つまり、風紀が“鬼”?」



聞く勇気がなかった。

知ってしまったらまたあの日を繰り返しそうで怖かった。



『…ごめん、シロ……』



あの日のアイツの顔が頭から離れない。



「そうだ。でも風紀の正体はトップシークレット。理事長も覇王も把握していない」

「文月さんも?」

「本来の風紀の仕事は学園内の秩序の乱れを正すこと。そのためならどんな手段も厭わない。だから恨みを買うことも多い。そのための対策だ」

「つまり誰も風紀委員のメンバーを知らないってことか…」

「ああ。そんなの小さな独立国家みたいなもんだろう。でもそれが昔からの伝統で今も続いている。知恵の生徒会、力の風紀とも言われてるくらいだ」

「チッ」



決して奴等に会いたいわけじゃない。

でも見分けが付かないのは厄介だな。



「“鬼”が風紀であれば実行犯が容易に学園に侵入出来たことも何ら不思議じゃない。風紀は生徒会同様学園の防犯システムへのアクセス権を持っているからな」

「なら月は“鬼”の仲間?」

「いや、恐極に“鬼”を動かしている自覚はなかったはずだ。恐らく恐極が掲示板に投稿した内容を見て偶々それに食い付いたのが“鬼”だったんだろう」



頼稀は単車や掲示板のことも知っていた。
月について相当調べてくれたようだ。



「覇王も黒幕の存在には気付いていると思うがその正体までは辿り着いていないはずだ」

「断言しちゃうんだ…」



まあ、その通りだが。



「覇王じゃ無理。俺だから出来んだよ」

「え、ここで自慢?」

「事実を言ったまでだ。覇王にお前は守れない」

「守るって…。別に守ってもらうつもりはないけど」

「お前がそうでも覇王はそう思ってないはずだ。その証拠に覇王は事あるごとにお前に介入している。俺からしたら正直目障り以外の何者でもない」


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