歪んだ月が愛しくて1
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「だから無駄だって言ったのに…」
真っ暗な室内にキーボードを叩く音だけが響く。
パソコンに映し出された防犯カメラの映像には元チームメイトの愚行が終始録画されていた。
素直に大人しくして置けばいいものを見当違いな復讐心なんて抱くからこうなるのだ。
仲間がヤられたとかどうとか言っていたがくだらない。
自分のこともままならないくせに何が仲間だ。同情の余地もない。
一時でもアレが同じチームに属していたと思うと恥ずかしくて仕方ない。
奴等には何一つ期待していなかったが、まさかあんな堂々と乗り込んで来るとは思ってもみなかった。
お陰であの人へのフォローとか諸々の後処理とかで余計な仕事が増えてしまったが…。
『それに貴方達が捜してるのはその恐極さんって人なんですよね?僕、実はここの理事長と知り合いで…、もしかしたらその恐極さんって人が今どこにいるか分かるかもしれません!だからお願いします!僕が理事長にお願いして恐極さんのこと捜してもらいますから、だから西川くんのことは…っ』
その瞬間、マウスを持つ手に力が入る。
咄嗟に停止したその映像には黒髪の少年が映っていた。
夜間行われた肝試しの時とは違い日中の防犯カメラ映像にはその黒髪の少年の人相が映像でもはっきりと認識出来た。
「へぇ、こんな顔してたんだ…」
実物を拝んだのはこれが初めてだった。
肝試しの時の防犯カメラの映像は夜間のため映像が不鮮明で人相まで確認することが出来ず、また足が付くと思い学園に保管されている個人名簿にはあえて手を付けていなかった。
ただ恐極のターゲットにされた少年の名が「藤岡立夏」だと言うことは分かっていた。
そこから独自に調べようと手を尽くしたが未だ「藤岡立夏」の素性に辿り着くことは出来なかった。
簡易なプロフィール程度では意味がない。もっと核心に触れる情報でなければ。
それがここに来て素顔を拝めることになるとは元チームメイトの愚行も無駄ではなかったと言うことか。
そして理事長との関係を匂わせた、あの言葉。
信憑性はない。
その場凌ぎの出鱈目かもしれない。
しかし深追いするのには十分過ぎる疑惑だった。
「まさか、ね…」
予想外の収穫にキーボードを叩く手に力が入る。