歪んだ月が愛しくて1



立夏Side





立夏、晩春の候。
空は晴れ晴れしく新緑がもえ青葉が風薫る頃。



「―――親衛隊?誰の?」



それは授業中のことだった。
生憎4限は紀田先生の授業で当人はサボり。
俺達は自習のため前後左右の机を寄せて談笑していると突然希が可笑しな話題を切り出した。



「だから、そのうち立夏にも親衛隊が出来るんじゃないかって話」

「立夏くんは人気者だもんね」

「……人気?どこが?」



何でそんな話になったのか分からない。
でも唯一分かるのは向かいに座っている希と葵が目をキラキラに輝かせて興奮気味に話していると言うことと、俺の両サイドを陣取る未空と頼稀が何故か不機嫌そうに顔を顰めていると言うことだけだった。



「………」

「………」



珍しいこともある。
頼稀がムスッとしてるのはいつものことだが、未空がこの状態になるってことは何かあったのかもしれない。



「そう言えば立夏くんはあの噂知ってる?」

「噂?」



あれ、前にもどこかで…。



「そうそう!オタク……ぷ、ぷっはははっ!ダメだ!腹が捩れるぅ!」



あ、デジャヴ。



「もうっ、希くん笑い過ぎだよ!」

「だってオタクヤンキーだぜ!ネーミングセンスなさ過ぎて逆にウケんじゃん!」



ゲラゲラと腹を抱えて爆笑する希に居た堪れない気持ちになる。
別に俺が名前付けたわけじゃないけどあまりにもダサ過ぎて恥ずかしい。



「……悪かったな」



まさか皆まで知ってたとは。
頼稀が言うように結構噂が広まってるな。



ああ、今後のことを考えただけでも気が重い。



「言っただろう?」



頼稀が小さい声で俺に耳打ちする。
その瞳はどこか呆れてるようにも見えた。


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