歪んだ月が愛しくて1
「……ありがとう」
「は?」
素っ頓狂な声を上げる御手洗くんは何言ってるか分からないって顔で俺を見つめた。
「大切なことを教えてくれて」
「………」
欠けたピースはまだまだ埋まらない。
いつかピースが揃うって保証もどの部分が欠けているのかもはっきりと認識しているわけじゃない。
それでも気付けたことは一歩前進だとそう信じたい。
「……お礼を言われる覚えはないよ。僕はただ君の勝手な行動のせいでクラスが纏まらないのは学級委員長の僕のせいになるからやめてって言ってるだけ。迷惑だよ」
「以後気を付けます」
「宜しい」
「迷惑ついでにもう一つ迷惑なこと言っていい?」
「ねぇ、僕の話聞いてた?今やめてって言ったよね?」
「気を付けるとは言ったけどやめるとは言ってないよ」
「うっざ」
その言葉通り心底嫌われているんだろうな。自覚はある。
小柄でキリッとした猫目が特徴の御手洗くんは黙っていれば文句なしの美少年だが口を開けば辛口毒舌リアル女王様だった。
綺麗な花には棘があるとはよく言ったものだ。
「で、何?くだらないことだったらシバくよ」
「みっちゃんってやっぱり女王様だよね」
「シバく」
「何で!?」
咄嗟にギュッと固く目を瞑る。
でも訪れるはずの衝撃が襲って来ないことに不安になりそっと目を開けて御手洗くんの顔を覗き込むと…。
「……え?」
そこにはまるで林檎のように頬を染める御手洗くんがいた。
「な、何でみっちゃんって…」
あ、それでか。
「ごめん。つい…ダメだった?」
ちょっと馴れ馴れしかったか。
「……何で?君は僕のこと嫌いなんじゃないの?」
「は?」
それは思いも寄らない言葉だった。
あの新歓以来御手洗くんに嫌われている自覚はあったがその逆は有り得ない。
「僕は君に酷いことを言ったと思うんだけど…」
「酷いこと?」
『……許さない』
ああ、あれのことか…。
「……仙堂に言われたよ、君に謝れって」
「未空に?」
「あの仙堂が僕に怒鳴ってさ。流石の僕もあの時は驚いたよ。だから君はずっと僕のこと嫌ってると思ってたけど…。その様子だとどうやら忘れてたみたいだね」
「うん、今思い出した」
「チッ」
おお、こっわ。
女王様って言うより今は任侠映画に出て来る姐さんって感じだな。