歪んだ月が愛しくて1
「何で、そこまで…」
不思議で仕方なかった。
俺の正体を知っている頼稀ならまだしも他のクラスメイトとは全くと言って接点がない。強いて言うなら同じクラスと言うだけだ。
それなのに何で他人の俺なんかのことを心配出来るんだろうか。
「理解出来ないって顔だね」
「……出来ないよ。だって俺は皆のことを何も知らないのに」
「知ろうとしてないだけでしょう」
そう言ったと同時に御手洗くんは立ち止まった。
「少なくともクラスの連中は君のことを知りたいと思ってるよ」
クルッと反転して真っ直ぐに俺を射抜くその瞳はいつにも増して鋭利だった。
「何で…」
「興味あるからでしょう」
「興味?」
「君を示す代名詞は結構あってね。“特例で認められた転入生”から始まって今では“尊様のお気に入り”なんて言われてる」
「……ミーハー?」
「ミーハーだよ。でも誰かを知りたいって思う気持ちはそう言うところから始まるんじゃないの」
「………」
何かがスッと落ちて来た。
……そう、かもしれない。
ああ、そうか。
言われるまで気付かなかった。
「要するに勝手に動かれると迷惑なの、僕に」
「あ、御手洗くんがなんだ」
「当たり前だろう」
御手洗くんは「悪い?」と言って開き直る。
そんな御手洗くんに自然と口元が緩む。
「……凄い」
「は?何が?」
「御手洗くんが」
「……意味分かんないんだけど」
「俺は御手洗くんのように考えたことなかったから…」
『知ろうとしてないだけでしょう』
そう言われて初めて気付いた。
俺は何一つ自分から知ろうとしなかった。
いつも自分の殻に閉じ籠って無意識に諦めていた。
「図星だった?」
「……うん」
俺はいつも他人任せだった。
アイツと出会った時も、未空に生徒会に誘われた時も、その強引さに甘えて何だかんだ言って面倒事になると過保護な頼稀におんぶに抱っこで。
……あの時もそうだ。
『―――俺を憎め』
ああ、通りで居心地が良いわけだ。
だって俺は何一つ自分で選択してないんだから。