歪んだ月が愛しくて1
立夏Side
「―――成程。それで昨日は2人共生徒会室に来れなかったんですね」
「すいません、すぐ連絡しなくて…」
翌日、俺は生徒会室で桂木先輩に呼び出されたことを話した。
元々説明する気はなかったのに未空が余計なことを言ったせいで説明と謝罪を余儀なくされたのだ。
「過ぎたことは仕方ありません。見たところ立夏くんに怪我はないようですし。でも二度とこのようなことがないようにお願いしますね」
「はい…」
「未空もですよ?」
「はーい」
「本当に分かってんのかね」
そう言いながら陽嗣先輩は未空の髪をわしゃわしゃと撫で回す。
「分かってるよ!てか頭触んな!髪抜けんだろう!」
「やーい、ハゲろハゲろー」
「ハゲねぇよ!ヨージがハゲろ!」
「陽嗣がハゲるのは構いませんがくれぐれも桂木くんには気を付けて下さいね。彼の悪知恵は相当なはずです。そうでなければ覇王親衛隊を統率することは出来ませんから」
「ははっ、自分で言ってりゃ世話ねぇな」
「おや、何か言いましたか?(黒笑)」
「滅相もございませんっ!」
陽嗣先輩と九澄先輩の夫婦漫才+αを横目に3人掛けのソファーに座り込むと不意に不機嫌そうな声が耳に届いた。
「勝手なことしてんじゃねぇよ」
声の主は会長だった。
「だから謝ったじゃないですか」
「謝って済めば警察はいらねぇんだよ」
それ、月の時も聞いた気がする。
案外お気に入りなのかな、このフレーズ。
「何かあったら必ず連絡しろと言ったはずだ」
「そうだけど…」
「言い訳はいい」
連絡する余地がなかったと言えば嘘になる。
ただ連絡さえしなければ親衛隊と接触したことはバレないと思ったし、親衛隊くらい自分で何とかしなきゃいけないと思ったからあえて連絡しなかった。
「連絡くらい寄越せ」
「イゴキヲツケマス」
ギロッと、黒曜石が鋭く睨み付ける。
そこまでガン飛ばさなくてもいいのにと思う反面、今回のことは全面的に俺が悪いから下手に言い訳なんて出来なかった。
あの後夜中部屋に押し掛けて来た頼稀からも大分お説教食らいましたからね、トホホホ。
「余計な心配させんじゃねぇよ、ボケ」
ふと耳に届いたのは拗ねたような小さな声だった。
その言葉に俺が会長の顔を覗き込むと会長はプイッと顔を逸らした。
「……心配、したの?」
「二度は言わねぇ。でも守らなかったらぶっ飛ばす」
「………」
「返事」
「は、はい!」
ああ、どうしたものかな。
心配なんてされたくなかったのに。
「……何笑ってやがる?」
「いや、だって会長が優しいから可笑しくて…」
「あ?喧嘩売ってんのかお前?」
「売ってませんよ。てか褒め言葉なんだけど」
「どこがだ?寧ろ貶してんだろうが」
「あ、俺コーヒー淹れて来る」
「話を逸らすな」
俺は会長の言葉を無視して給湯室に逃げ込んだ。
その後ろ姿に会長が舌打ちしたのは言うまでもない。
(嬉しいなんて、思っちゃいけないのに…)
やっぱり俺って単純だな。