歪んだ月が愛しくて1



「どうぞ」



スッと、執務机の上にカップを置く。



「今日のは自信あります」

「いつもはねぇのかよ」

「いいから飲んでみて下さいよ」



ニヤリと口元を緩めて挑発すると会長は目を細めてからカップに鼻を近付ける。



「……香りが違ぇ」

「え?」



そう言いつつも会長はカップに口を付けた。



「いつものじゃねぇな」

「そんなはずは………あっ」

「どれどれ」

「もしかして未空のカフェオレ用のものを使ったんじゃありませんか?」

「猿のはお子様用だからな」

「俺は猿じゃねぇ!」

「お子様は否定しねぇんだな」



会長は冷静にツッコミながら再度カップに口を付けようとするが。



「ストップ!」

「あ?」

「それ飲まないで!今作り直すから!」

「いい」

「良くないでしょう!会長が好きな豆で淹れてないんだから!」

「だからこれでいいって言ってんだろうが」

「いや、でも会長の口には合わないんじゃ…」

「偶には悪くない」



会長は俺が淹れたコーヒーを飲みながら執務机の上の煙草に手を伸ばした。
左手を怪我しているから右手だけで器用に煙草を取り出して口に銜えた。
その仕草に思わず見入ってしまった。
未成年のくせに様になってるとか詐欺だ。
日本人離れした端正な顔立ちが高校生であることを疑わせた。



「何だ、煙いか?」

「えっ」



不意に会長と目が合った。
見当違いの会長の言葉に内心安堵した。



「リカ、臭かったら臭いって言っていいんだよ」

「本人のためですからね」

「禁煙者はこう言ってますが?」

「言わせとけ」

「おやおや、優しいのは立夏くんにだけですか?」

「俺達を肺がんにさせたいのか!」

「煩ぇな。窓開けてやってんだろうが」

「今の時代喫煙者には厳しいのよ」

「……その前に未成年ですよね?」

「固いことは気にしないの!めっ!」

「「「キモ」」」

「あれ、デジャヴ?」


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