歪んだ月が愛しくて1
立夏Side
「ごめんなさいっ!!」
「………は?」
次の瞬間、教室内が静寂に包まれた。
でもその静寂も長くは続かず、頭を下げる俺と怪訝そうな表情を浮かべる頼稀を見てざわざわと周囲が騒ぎ立てる。
「あらやだ、もしかして修羅場?」
「しかも玉砕よ。眼鏡ちゃんやるわねぇ」
「玉砕って…!まさか頼稀くんが立夏くんにこ、ここ…告白っ!?」
「どうやらフラれたみたいだね、ご愁傷様です」
上から未空、希、汐、遊馬が口々に声を上げる。
……何か面白がってない?
「ねぇ、皆して何やってんの?」
それを不審に思った葵がみっちゃんを引き連れて未空に尋ねた。
「修羅場を目撃した通行人役ごっこ」
「た、楽しそうだね…」
「どこがだよ」
「因みに立夏に告った頼稀が即行玉砕されたって設定だよ」
「誰が誰に玉砕されたって?」
「あ、頼ちゃんお帰り〜」
「誰が頼ちゃんだ。適当なこと言ってんじゃねぇよ」
「適当?じゃあ何でリカが頼稀に謝んのさ?」
「そうだよ!まさか本当に立夏くんに告は…「んなわけあるか」
頼稀は汐の頭をペシッと叩く。
すると未空は俺の腕にギュッと巻き付いて肩に頭を乗せて来た。
「ねぇ、リカは何で頼稀に謝ったの?」
「……上目遣い攻撃。未空さんあざといよ」
「最近の傾向からしてリカはこれに弱いよね」
「卑怯者」
「はいはい、話を逸らさないの。理由を聞くまで離さないからね」
「別に大した理由はないけど…」
「じゃあ言えるでしょう?何で?」
「いや、その…、頼稀に管理人室の掃除を手伝えって言われたんだけど別の用事が入ったから断ったんだよ」
「は?それだけ?」
「うん、それだけ」
「はぁ…、くだらない」
「まあ、そんなことだろうと思ったけどな」
「だから大した理由じゃないって言ったじゃん。てか何で汐は焦ってたの?」
「あ、焦ってなんかないよっ!本当に!全然!頼稀くんが立夏くんに告白したなんて話全然信じてないからね!」
「下手クソ。バカでももう少しまともな嘘吐きなよ」
「うっせー!どうせ俺はバカだよ!」
「何だ、よく分かってんじゃん」
「お前喧嘩売ってんのか!?」
汐と遊馬の言い合いは続く。
気付けば他の皆も汐を弄り始めていた。
「……本当に?」
未空以外は。
「本当にそれだけ?」
「………」
未空の声が静かに浸透していく。