歪んだ月が愛しくて1



「それだけだよ。大体頼稀が俺に告白するわけないじゃん、俺男だよ?」

「リカが男なのは知ってるけど、それって全然説得力ないからね!」

「確かに」

「立夏くんは中性的な顔立ちだもんね。女子の制服着てても違和感ないかも」

「……まあ、ブスではないんじゃない」

「寧ろ容姿だけなら学園トップ3には入るかと」

「俺は一番だと思うけど…(小声)」

「汐、声小さいよ」

「っ!?」



はぁ…、と頼稀の溜息がやけに大きく聞こえた。



「これで分かっただろう。何疑ってるか知らねぇが勘繰るだけ無駄だ」

「そうそう。それに未空達に聞かれたくないことだったら皆の前で話さないって」

「………」

「あれ?まだ納得してない感じ?」

「納得してない奴はここにもいるよ」

「………え、俺っ!?」

「未空くん、眉間に皺が出来てるよ」

「男の嫉妬は醜いぞ」

「……醜くてもいいもん」

「あ、認めた」

「いつまでもいじけてると格好悪いよ」

「ふん」

「ダメだこりゃ」



お手上げ状態の未空は不機嫌そうに口元を窄めたまま俺から離れようとしない。
そんな未空に俺はどうしたものかと思考を巡らすが、だからと言って本当のことを言えるはずもなくここは暫く未空の好きにさせて様子を見ようと思った矢先ふと思い出して声を上げた。



「………あっ」

「どしたのリカ?」



未空は至近距離から俺の顔を覗き込む。



「俺、未空に謝りたいことが…」

「謝りたいこと?」

「親衛隊からの手紙のこと。未空達が心配してくれたのに俺…」



『……そんなことないよ。ただ頼る必要がなかっただけ』



「自分のことしか考えてなかった。未空達の気持ちも考えないで身勝手なこと言って…、ごめん」

「………」



『誰かのことを知る前に身近な奴のことをもっと知ってやってよ』



何も知ろうとしなかった。
でもみっちゃんに喝入れてもらって少しだけ皆の前で本心を曝け出せて、たったそれだけのことで自分が変われたような気になっていた。
本当は何も変わってないのにね…。
独り善がりで、偏屈で、一番近くにいる大切な人達の存在に甘えていただけだった。

今もまだ陽嗣先輩の宿題には答えられそうにない。
でも未空を傷付けて、会長に怪我までさせて、文月さんに初めて本音をぶつけて、それでやっと気付けたことがある。



「……それ、誰かに言われたの?」



その言葉に首を左右に振って否定した。



「違うよ。でも気付かせてくれたのは皆がいてくれたからだよ」

「リカ…」

「酷いこと言ってごめん。でもあの時迎えに来てくれてありがとう」

「っ、」



すると未空は口元をギュッと結んで俺を強く抱き締めた。



「……もう、あんな寂しいこと言わないで」

「うん…」

「約束だよ。またリカが頼ってくれなかったら今度は俺達がリカのこと頼りまくるから。リカがしつこいって言うくらいスゲー頼るから!俺決めたんだからね!」

「うん、ありがとう」



そう言うと未空は腕の力を少しだけ緩ませて俺と目を合わせてニカッと笑った。
あの時の悲しそうな顔じゃない、俺の大好きな笑顔で。



そんな俺達のやり取りを見ていた希が一番に声を発した。



「……何か、立夏って雰囲気変わったよな」

「そうだね。前より雰囲気が柔らかくなった感じがする」

「相変わらず笑顔は下手くそだけどね」

「そこは大目に見てあげようよ、今は」

「今は?」

「ふふっ、今は」

「あははっ、未空のお手柄じゃん」

「……僕は仙堂だけの力じゃないと思うけどね」

「未空くんだけじゃないって…、もしかして神代会長達のこと言ってる?」

「んー…それはそれで何かモヤモヤするような…」

「何、嫉妬してるの?」

「し、しし嫉妬っ!?な、何で俺が覇王なんかに嫉妬しなくちゃいけないんだよ!?」

「バレバレ」

「未空くんも他の先輩達も立夏くんのことになると一生懸命だもんね」

「確かに。神代会長なんて身を挺して立夏のこと守ってくれたもんな」

「……まあ、そのくらい出来なきゃアイツを任せた意味がねぇからな」

「………」

「………」



頼稀の言葉に汐と遊馬は黙り込む。
しかしその双眸はしっかりと護衛対象を捉えていた。



「利用出来るものは何でもしてやる…」



その意味を正確に把握した人間は果たしているのだろうか。

彼等の輪から外れて未空にかまけていた俺には知る由もなかった。










(リカだーいすき♡)

(はいはい)


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