歪んだ月が愛しくて1
「そういや、お前勘違いしてんだろう?」
「え、」
不意に俺の頭を撫でていた会長の手が止まったかと思えば会長は至近距離から俺の顔を覗き込んでそう言った。
その言葉が俺を悪夢へと引き摺り込む…、
「いたっ!!」
かと思いきや会長の長い指が俺の額を思いっきり弾いた。
何故!?
「何すんだよ!?デコピンとか地味に痛いんだけど!」
「考えてることが顔に出過ぎなんだよ」
「は?」
「勘違いって言ったのはお前が変な誤解をしてるからだ」
「ご、誤解…?」
「気にしてただろう、俺がお前の素性を調べたこと」
「……あ」
漸く分かった。会長が何を言いたいのか。
説明下手過ぎ。口下手か?
「言って置くが、別に他意はないぞ。転入して来たのがお前じゃなくても俺は同じことをした。まあ、異例の転入生に興味がなかったと言えば嘘になるが」
「………」
その言葉に嘘はないと思う。
……いや、そう思いたいだけなのかもしれない。
「……利用する、ためじゃないの?」
「利用?何の?」
「いや、分かんないけど…」
聞きたいのは俺の方だ。
「鏡ノ院に何を吹き込まれたか知らねぇが、お前を利用して鏡ノ院を陥れたところで俺には何の得もない。逆の立場ならそう思うのも無理はないがな」
言われてみれば確かにそうだ。
下克上を狙うとしたらそれは文月さんの立場でだ。
「じゃあ、俺が文月さんの親戚じゃなくても、関係ない…?それでも俺が生徒会に入ることを許可した?」
「ああ。寧ろどうでもいい」
「そ、っか…」
会長の言葉に無意識に口元が綻ぶ。
……そっか。
会長にとってはどうでもいいことなんだ。
その事実が何だか嬉しい。
何が嬉しいのかはよく分からないけど。
「……お前は、自分の過去を知られたくねぇのか?」
「、」
グッと、無意識に言葉が詰まった。
何も答えられないまま俯くことしか出来なかった。