本当の愛を知るまでは
光星が帰国する日がやって来た。
羽田空港に夜到着する便で、花純は仕事を終えると光星のマンションで料理を作って待っていた。
ダイニングテーブルに、次々と和食を作っては並べていく。
今か今かと時計とにらめっこしていると、ガチャッとドアの開く音がした。

「花純、ただいま」
「光星さん! おかえりなさい」

パタパタと玄関まで出迎えに行くと、花純は溢れる気持ちのまま光星に抱きつく。

「えっ、花純? どうした?」

自分から抱きしめようと手を広げていた光星は、腕の中に飛び込んできた花純に戸惑った。
いつも控えめな花純が、こんなにも感情をあらわにするとは……。

「会いたかったの。すごくすごく」
「花純……」
「嬉しい。やっと会えた」
「ああ、俺も嬉しいよ」

互いの温もりを感じながらギュッと抱きしめ合い、ようやく気持ちが落ち着くと、光星は優しく花純にキスをする。
頬を赤く染めて目を潤ませる花純に、光星は切なさが込み上げてきた。

「花純、こんなにも俺を好きでいてくれたんだな」
「うん。自分でもびっくりするくらい、光星さんのことが恋しかったの」
「ちょ、ごめん」

光星は顔を真っ赤にすると、片手で口元を覆う。

「はあ……。面と向かってこんな可愛いこと言われたら、もう……」

そう呟くと、花純を抱きしめて唇を奪った。

「花純、もう認めて。俺を心から好きだって」
「そんなの、とっくに私はあなただけのものです」
「花純……」

互いを求める気持ちは収まるどころか熱を増す。
光星は花純を抱き上げると寝室に向かった。
結局、花純が作った料理を二人が食べたのは、深夜0時を回ってからだった。
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