本当の愛を知るまでは
時間がある時には、39階の自分のオフィスにも顔を出した。

「花純! ちょうど良かった。はい、差し入れ」

そう言って千鶴は、お菓子やフルーツ、アロマグッズなどを詰めた紙袋を渡してくれる。

「ありがとう! 千鶴ちゃん。仕事もお任せしてごめんね」
「いいってことよ。全部片づいたらビールおごってね」
「うん、もちろん」
「美味しく飲める日を楽しみにしてる。それまでがんばるのよ、花純」
「うん! ありがとう、千鶴ちゃん」

少しでも仕事をしようと思っていたのが、結局は何も出来ずに励まされてしまう。
皆の優しさに感謝しながら、元気をもらってまた光星のもとへと戻った。

だが、日に日に光星は疲れて表情も暗くなり、食事と睡眠もろくに取れずにやつれていく。
なんとかしたいのに、これ以上何も出来ない自分が歯がゆく、花純も懸命に辛さを堪えていた。
< 117 / 127 >

この作品をシェア

pagetop